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表面処理の種類と効果比較

5月2日

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めっき・アルマイト・熱処理の基礎と使い分け


はじめに


金属部品の設計や加工では、「どの材料を使うか?」に加えて、「どんな表面処理を施すか?」も非常に重要な判断ポイントです。

耐食性、硬度、外観、耐摩耗性、導電性… こうした性能を高めるために行うのが表面処理です。

この記事では、現場で特によく使われる以下3つの処理を中心に、 それぞれの特徴・効果・適した用途を実践的に解説します。


  • めっき(電気めっき、無電解めっきなど)

  • アルマイト処理(陽極酸化処理)

  • 熱処理(焼入れ、焼戻し、浸炭など)



表面処理の目的とは?


金属に表面処理を施す目的は大きく分けて以下の5つ

目的

具体的な効果

① 耐食性向上

サビや腐食を防ぐ(屋外・水回りなど)

② 耐摩耗性向上

表面を硬くし、すり減りを防ぐ

③ 外観の改善

装飾性・ブランド価値向上(色、艶など)

④ 機能付与

電気伝導性・絶縁性・潤滑性など

⑤ 耐熱性・硬度UP

高温や衝撃に耐える性能を付与

同じ素材でも、適切な表面処理を施すだけで、寿命や性能が大きく変わることは少なくありません。



めっき処理|見た目+防錆+機能を手軽にプラス


概要


「めっき(メッキ)」とは、金属の表面に別の金属を薄くコーティングする処理。 目的によってさまざまな金属(亜鉛、ニッケル、クロム、金など)が使われます。



種類と効果

めっき種別

特徴

主な効果

用途例

亜鉛めっき

安価で広く使われる

防錆

ボルト、ナット、屋外金具

ニッケルめっき

耐食+光沢あり

装飾+防錆

家電、装飾金属

クロムめっき

硬度が高い、耐摩耗性◎

表面保護、美観

自動車部品、水栓金具

無電解ニッケルめっき

均一な膜厚が得られる

寸法精度が必要な機能部品に

精密機構部品、金型


加工上の注意点


  • 電気めっきは形状により膜厚ムラが出やすい

  • アルミやステンレスは事前の下処理が必須(直接めっきが乗らない)

  • クロムめっきは環境規制に注意(RoHSなど)



アルマイト処理|アルミ専用の酸化皮膜で耐食性アップ


概要


アルマイト処理(陽極酸化処理)は、アルミニウムの表面に人工的に酸化皮膜(Al₂O₃)を形成する処理です。 この皮膜は透明で硬く、着色も可能。


特徴と効果

処理種別

特性

主な効果

用途例

普通アルマイト(白)

耐食性UP、表面硬化

アルミの基本処理

機械カバー、構造部品

着色アルマイト

表面を美しく着色可能

装飾性UP

製品ロゴ、ノブ、外装品

硬質アルマイト

通常の2〜3倍の皮膜厚

耐摩耗性◎、高硬度

スライド部、摺動部品


加工上の注意点


  • アルミ合金の種類によって色ムラ・反応の違いが出る

  • 切削後に処理すると公差が変わるため、寸法設計に注意

  • 表面に微細な穴が空いているため、染料や油が染み込むこともある



熱処理|金属の内部構造を変えて、硬度や靭性をコントロール


概要


熱処理は、材料全体に熱を加えて、強度や硬度・靭性などの機械的性質を変える処理です。 鉄鋼材料や工具鋼によく使われます。



種類と効果

処理種別

温度帯

効果

主な用途

焼入れ(焼き入れ)

高温→急冷

硬くなる(が脆くなる)

シャフト、刃物、ギア

焼戻し(焼きもどし)

焼入れ後に再加熱

靭性を持たせる

衝撃を受ける部品全般

焼なまし(アニール)

600〜800℃

軟化・応力除去

加工前の素材処理

浸炭処理

高温+炭素ガス雰囲気

表面だけ硬くして芯部は靭性維持

歯車、ピン、カム


加工上の注意点


  • 熱処理後は寸法変化や歪みが出やすいため、仕上げ加工は後段で行うのが一般的

  • 浸炭焼入れは、複雑形状の部品ではコントロールが難しいため、経験値が重要

  • 材料によっては熱処理できない鋼種もあるので事前確認が必須



表面処理の比較表|どの処理がどんな効果に強い?


処理種別

耐食性

硬度UP

美観

寸法精度

備考

亜鉛めっき

安価、防錆重視向け

ニッケルめっき

装飾と防錆の両立

アルマイト(普通)

アルミ専用、色もOK

アルマイト(硬質)

摺動部にも対応

無電解ニッケル

寸法精度が必要な部品に◎

焼入れ+焼戻し

×

鉄鋼部品の強度UP

浸炭焼入れ

×

表面のみ硬化、芯は粘り強さ保持



まとめ|表面処理の理解が設計と加工の質を大きく高める


金属部品の性能や寿命は、材料選定だけでなく、適切な表面処理に大きく左右されます。 同じS45Cでも、「そのまま使う」のと「焼入れ+焼戻し」をするのとでは、まったく別物の部品になります。


✅ 若手技術者が押さえるべき表面処理の考え方


  • 防錆目的 → めっき or アルマイト(アルミ)

  • 高硬度・高耐摩耗 → 熱処理 or 硬質アルマイト

  • 寸法精度が重要 → 無電解めっきや後加工を考慮

  • 美観が重要 → クロムめっきやカラーアルマイト


製品の品質やコスト、耐久性を左右する「表面処理」は、設計段階から考慮するべき重要な要素です。 ぜひ現場での選定・指示出しにお役立てください!

5月2日

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