一般構造用圧延鋼材(SS材)
SS材は汎用性の高い構造用鋼材で、JIS規格ではSS400が代表例です。溶接性や加工性が良く、建築や機械部品に幅広く使われます。

一般構造用圧延鋼材(SS材)の種類(JIS規格および代表的なもの)
一般構造用圧延鋼材(SS材)は、建築や機械部品など、幅広い分野で使用される汎用性の高い鋼材です。本記事では、JIS規格で分類される一般構造用圧延鋼材(SS材)の種類とその特性、用途について詳しく解説します。
1. 一般構造用圧延鋼材(SS材)の種類
SS275:
SS275は、SS330よりもさらに低い降伏点を持つ鋼材で、軽量構造や特定の低負荷用途に適しています。主に簡易的な構造物や軽量部品に採用されます。
特性: 降伏点は185N/mm²以上、引張強さは275N/mm²以上。
用途: 軽量構造材、簡易的な溶接構造物。
SS330:
SS330は、SS材の中で最も低い強度を持つ鋼種ですが、非常に高い加工性を有します。そのため、複雑な形状の加工や軽量な部品に適しています。SS330は溶接性にも優れており、一般的な構造用材として広く使用されています。
特性: 降伏点は205N/mm²以上、引張強さは330–450N/mm²。
用途: 軽量構造材、パイプ部品、一般的な溶接構造物。
SS400:
SS400は、SS材の中で最も汎用的な鋼種です。溶接性、加工性、経済性のバランスが取れており、構造用鋼材の代表格とされています。建築物や橋梁、機械部品など多岐にわたる用途で使用されています。
特性: 降伏点は245N/mm²以上(板厚16mm以下の場合)、引張強さは400–500N/mm²。
用途: 建築物の鉄骨、橋梁、船舶、機械部品。
SS490:
SS490は、SS400よりも高い強度を持つ鋼種であり、大規模な構造物や高荷重がかかる部材に適しています。その高い耐荷重性能により、特にインフラや重機部品に採用されています。
特性: 降伏点は325N/mm²以上、引張強さは490–620N/mm²。
用途: 高層建築の骨組み、橋梁、クレーン部品。
SS540:
SS540は、SS材の中で最も高い強度を持つ鋼種であり、耐荷重性能が特に重視される用途に使用されます。高い強度と耐久性により、重機や特殊な構造物に最適です。
特性: 降伏点は400N/mm²以上、引張強さは540–720N/mm²。
用途: 重機のフレーム、高強度が必要な建築部材、橋梁。
SMA材(耐候性鋼材):
SMA材は、耐候性を高めた鋼材で、錆による腐食を防ぐ特性があります。特に、屋外の構造物や塩害が懸念される地域での使用に適しています。
特性: 高い耐候性。
用途: 橋梁、屋外モニュメント、鉄道設備。
FR材(耐火性鋼材):
FR材は、火災時の耐久性を向上させた鋼材で、特に高層建築や防火性が求められる用途に使用されます。火災時にも構造が崩壊しにくく、安全性を高めます。
特性: 耐火性能。
用途: 高層ビル、地下構造物、火災安全対策が必要な建築物。
SN材(建築構造用鋼材):
SN材は、建築構造用に特化した鋼材で、溶接性や加工性が向上しています。SN400やSN490などの種類があり、それぞれ用途に応じた強度を持ちます。
特性: 優れた溶接性と耐震性。
用途: 建築用骨組み、鉄骨構造物。
HT材(高張力鋼材):
HT材は、通常のSS材よりも高い引張強度を持つ鋼材です。軽量化と高強度を両立しており、特に橋梁や建築構造物で採用されています。
特性: 高引張強度と軽量性。
用途: 橋梁、建築構造、重機部品。
LT材(低温用鋼材):
LT材は、低温環境下での延性や衝撃強度を向上させた鋼材で、冷凍設備や寒冷地での使用に適しています。
特性: 低温下での高い延性。
用途: 冷凍設備、北極圏の建築プロジェクト。
UHSS材(超高強度鋼材):
UHSS材は、航空宇宙や自動車産業向けに設計された非常に高い強度を持つ鋼材です。特に軽量化が重要な用途で使用されます。
特性: 非常に高い引張強度。
用途: 航空機、自動車部品、構造用材。
リサイクル鋼材:
リサイクル鋼材は、持続可能性を考慮してリサイクル素材から製造された鋼材で、環境に配慮したプロジェクトで使用されます。
特性: 環境負荷の低減。
用途: 環境に配慮した建築、インフラプロジェクト。
2. 用途別グループ
建築分野
SS400: 建築用鉄骨や屋根材、内装部品に幅広く使用されます。
SN材: 耐震性や溶接性が重視される建築部材に適しています。
FR材: 防火性能が求められる高層建築や地下構造物。
HT材: 軽量化と高強度が必要な建築構造物。
機械分野
SS330: 機械部品のベース素材や軽量部材として活用されます。
SS540: 重機や大型機械のフレーム部品に使用されます。
UHSS材: 自動車部品や航空機部品。
インフラ分野
SS400: 橋梁や鉄道用の鋼材として採用されます。
SMA材: 耐候性が必要な橋梁や屋外設備。
SS490: 高荷重がかかる橋梁の主桁や耐久性が求められる部材に適しています。
LT材: 寒冷地での橋梁や冷凍設備。
3. 各一般構造用圧延鋼材(SS材)の性質・用途
SS275:
SS275は、軽量構造や低負荷の用途に適した鋼材で、簡易的な溶接構造物や部品に使用されます。
SS330:
SS330は、低強度ながら非常に高い加工性を持つ鋼種で、溶接構造物や軽量な部品に適しています。その特性を活かし、特に複雑な形状を必要とする用途で広く使用されています。
SS400:
SS400は、汎用性が高く、多くの分野で採用されている鋼種です。溶接性や加工性が良好で、建築物の鉄骨や橋梁、船舶、機械部品など、あらゆる分野で使用されています。特に、コストパフォーマンスの高さが評価されています。
SS490:
SS490は、SS400よりも高い強度を持ち、大規模な構造物に適しています。橋梁や高層建築物の骨組み、クレーンなど、耐久性が求められる場面でその性能を発揮します。
SS540:
SS540は、SS材の中で最も高い強度を誇ります。そのため、重機のフレームや耐荷重性能が重要な橋梁、大規模な建築物に最適です。また、特殊な耐久性が求められる用途でも活躍します。
SMA材:
SMA材は、屋外の耐候性が必要な用途で使用され、錆による腐食を防ぎます。特に橋梁や屋外設備で信頼性を発揮します。
FR材:
FR材は、防火性が重視される建築用途で使用されます。火災時でも構造が崩壊しにくく、高層建築物や地下施設で安全性を確保します。
SN材:
SN材は、耐震性が要求される建築物の骨組みや鉄骨構造物で使用されます。溶接性が高く、加工も容易であるため、多様な建築用途で採用されています。
HT材:
HT材は、引張強度が高く、軽量化と高強度を両立する必要がある橋梁や建築構造物で使用されます。
LT材:
LT材は、低温環境下でも高い延性と衝撃強度を発揮し、寒冷地や冷凍設備での使用に適しています。
UHSS材:
UHSS材は、非常に高い強度を持つ鋼材であり、特に軽量化が重要な航空機や自動車部品に使用されます。