
アルミ・銅・真鍮の違いと最適な使い方
はじめに
設計や加工現場で「金属材料を選ぶ」と言ったとき、多くの人が鉄鋼材料を思い浮かべますが、実は非鉄金属も非常に多くの分野で使用されています。
特に「アルミニウム」「銅」「真鍮」は、軽さ・導電性・見た目・加工性などに優れ、用途によっては鉄よりも高いパフォーマンスを発揮します。
この記事では、それぞれの非鉄金属の性質や加工上の注意点、現場での材料選定のコツまで、実践的に掘り下げてご紹介します。
非鉄金属と は?鉄に頼らない設計の選択肢
非鉄金属とは、その名の通り「鉄以外の金属材料」。
アルミ・銅・真鍮以外にも、チタン、マグネシウム、ニッケル、亜鉛など様々ありますが、日常的な設計・加工で特に出番が多いのが以下の3つです。
材料 | 主な特性 | よく使われる業界 |
アルミニウム | 軽量、耐食性◎、強度は中程度 | 自動車、航空、建築、精密機器 |
銅 | 電気・熱伝導率トップクラス、加工性◎ | 電気・電子、冷却機器、建築設備 |
真鍮 | 加工性・装飾性◎、コストも手頃 | 水栓金具、機構部品、装飾パーツ |
アルミニウム(Al)|軽くて強い万能素材
特徴と利点
比重2.7と非常に軽量
自然酸化皮膜による耐食性に優れ、腐食しにくい
熱・電気の伝導性も高い(銅には劣るが実用範囲)
合金化することで高強度・耐摩耗性・加工性が向上
よく使われるアルミ合金
合金番号 | 特性 | 用途例 |
A1050(純アルミ) | 軟らかく展延性が高い、電気伝導率◎ | 反射板、電解コンデンサ、装飾材 |
A5052 | 耐食性と強度のバランスが良く、溶接性も良好 | パネル、ブラケット、船舶部品 |
A6061 | 強度と加工性のバランスが良い万能型合金 | フレーム、機械部品、車両部品 |
A7075 | 非常に高強度。ただし溶接・耐食性は劣る | 航空機部品、精密構造材 |
加工性と注意点
アルミは切削抵抗が低く、工具への負担が少ないため、高速加工に向く
ただし軟らかすぎるとバリが出やすい・変形しやすいため、肉厚や支持構造に注意
高強度合金(A7075など)は応力腐食割れ(SCC)や表面腐食に配慮が必要
銅(Cu)|電気と熱を通す金属の王様
特徴と利点
電気伝導率、熱伝導率と もに非常に高い(銀に次いでNo.2)
展延性(のばしても割れにくい)・耐食性にも優れる
一般的に比重は約8.9で、アルミに比べて重い
抗菌性があり、医療・衛生分野でも需要増
代表的な銅材と違い
材料記号 | 特性 | 用途例 |
C1100(タフピッチ銅) | 電気伝導性◎、加工性良好 | 電線、導体、端子 |
C1020(無酸素銅) | 高純度で溶接・真空用途に最適 | 電極、電子部品、理化学機器 |
C1220(りん脱酸銅) | 溶接性に優れ、耐食性も良好 | 給湯・冷却配管、熱交換器 |
加工性と注意点
非常に加工しやすく、精密加工や薄物加工にも対応可能
表面が酸化しやすいため、保管時や外観仕上げに注意
切削時にはねばりのある切りくずが出やすく、切りくず排出対策が重要
真鍮(Brass)|美観と加工性のハイブリッド素材
特徴と利点
銅+亜鉛の合金で、美しい金色の光沢と高い加工性が魅力
銅より安価で、硬度や強度も向上
硫黄・鉛を微量添加した**快削黄銅(C3604など)**は、切削性が非常に良好
代表的な真鍮材
材料記号 | 特性 | 用途例 |
C2801(七三黄銅) | 強度・加工性バランス良 | 水栓部品、装飾部品 |
C3604(快削黄銅) | 被削性◎、寸法精度が出しやすい | 精密ネジ、継手、電気端子 |
C3771(鍛造用真鍮) | プレス・鍛造向け | 蛇口、バルブ、金具類 |
加工性と注意点
バリが少なく、寸法精度も出しやすいため、NC旋盤や自動盤加工に最適
鉛入り材は加工性が良いが、RoHS指令(鉛規制)対象となる場合があるので要注意
溶接にはあまり向かず、ろう付け・接着が主流
非鉄金属の選定ガイド|失敗しないためのポイント
📌 材料特性 × 製品要件で考える
要件 | 推奨材料 | 理由 |
軽くしたい | アルミ | 重量1/3で設計自由度アップ |
通電・放熱が必要 | 銅 | 電気・熱ともに最適 |
高精度で加工したい | 真鍮(快削) | 切削性抜群、量産向け |
外観を重視 | 真鍮 or アルマイト処理アルミ | 高級感と見栄えの両立 |
耐食性重視 | アルミ or 銅 | 環境や薬品により選定 |
まとめ|非鉄金属は「目的に応じて賢く使い分ける」時代
非鉄金属は、鉄では補えない性能を持つプロフェッショナルな素材です。 材料選定では、以下を意識しておくと判断ミスを防げます。
✅ チェックポイント
使用環境(腐食・電気・熱・外観)
加工方法(切削、曲げ、ろう付け、鍛造)
コストと調達性(在庫の有無、納期、RoHS対応)
🔧非鉄金属の特性を理解することで、 「鉄以外の選択肢を持つ=設計の幅が広がる」という強力な武器になります。
「軽くて強く、見た目も美しい部品を作りたい」「電気信号が通る構造体を設計したい」 そんなときは、ぜひ非鉄金属の特徴を思い出してください!