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非鉄金属の加工性質と用途別の選定ガイド

5月2日

読了時間:4分

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アルミ・銅・真鍮の違いと最適な使い方


はじめに


設計や加工現場で「金属材料を選ぶ」と言ったとき、多くの人が鉄鋼材料を思い浮かべますが、実は非鉄金属も非常に多くの分野で使用されています。

特に「アルミニウム」「銅」「真鍮」は、軽さ・導電性・見た目・加工性などに優れ、用途によっては鉄よりも高いパフォーマンスを発揮します。

この記事では、それぞれの非鉄金属の性質や加工上の注意点、現場での材料選定のコツまで、実践的に掘り下げてご紹介します。



非鉄金属とは?鉄に頼らない設計の選択肢


非鉄金属とは、その名の通り「鉄以外の金属材料」。

アルミ・銅・真鍮以外にも、チタン、マグネシウム、ニッケル、亜鉛など様々ありますが、日常的な設計・加工で特に出番が多いのが以下の3つです。

材料

主な特性

よく使われる業界

アルミニウム

軽量、耐食性◎、強度は中程度

自動車、航空、建築、精密機器

電気・熱伝導率トップクラス、加工性◎

電気・電子、冷却機器、建築設備

真鍮

加工性・装飾性◎、コストも手頃

水栓金具、機構部品、装飾パーツ


アルミニウム(Al)|軽くて強い万能素材


特徴と利点

  • 比重2.7と非常に軽量

  • 自然酸化皮膜による耐食性に優れ、腐食しにくい

  • 熱・電気の伝導性も高い(銅には劣るが実用範囲)

  • 合金化することで高強度・耐摩耗性・加工性が向上


よく使われるアルミ合金

合金番号

特性

用途例

A1050(純アルミ)

軟らかく展延性が高い、電気伝導率◎

反射板、電解コンデンサ、装飾材

A5052

耐食性と強度のバランスが良く、溶接性も良好

パネル、ブラケット、船舶部品

A6061

強度と加工性のバランスが良い万能型合金

フレーム、機械部品、車両部品

A7075

非常に高強度。ただし溶接・耐食性は劣る

航空機部品、精密構造材


加工性と注意点


  • アルミは切削抵抗が低く、工具への負担が少ないため、高速加工に向く

  • ただし軟らかすぎるとバリが出やすい・変形しやすいため、肉厚や支持構造に注意

  • 高強度合金(A7075など)は応力腐食割れ(SCC)や表面腐食に配慮が必要



銅(Cu)|電気と熱を通す金属の王様


特徴と利点


  • 電気伝導率、熱伝導率ともに非常に高い(銀に次いでNo.2)

  • 展延性(のばしても割れにくい)・耐食性にも優れる

  • 一般的に比重は約8.9で、アルミに比べて重い

  • 抗菌性があり、医療・衛生分野でも需要増


代表的な銅材と違い

材料記号

特性

用途例

C1100(タフピッチ銅)

電気伝導性◎、加工性良好

電線、導体、端子

C1020(無酸素銅)

高純度で溶接・真空用途に最適

電極、電子部品、理化学機器

C1220(りん脱酸銅)

溶接性に優れ、耐食性も良好

給湯・冷却配管、熱交換器


加工性と注意点


 非常に加工しやすく、精密加工や薄物加工にも対応可能

 表面が酸化しやすいため、保管時や外観仕上げに注意

 切削時にはねばりのある切りくずが出やすく、切りくず排出対策が重要



真鍮(Brass)|美観と加工性のハイブリッド素材


特徴と利点


 銅+亜鉛の合金で、美しい金色の光沢と高い加工性が魅力

 銅より安価で、硬度や強度も向上

 硫黄・鉛を微量添加した**快削黄銅(C3604など)**は、切削性が非常に良好


代表的な真鍮材

材料記号

特性

用途例

C2801(七三黄銅)

強度・加工性バランス良

水栓部品、装飾部品

C3604(快削黄銅)

被削性◎、寸法精度が出しやすい

精密ネジ、継手、電気端子

C3771(鍛造用真鍮)

プレス・鍛造向け

蛇口、バルブ、金具類


加工性と注意点


 バリが少なく、寸法精度も出しやすいため、NC旋盤や自動盤加工に最適

 鉛入り材は加工性が良いが、RoHS指令(鉛規制)対象となる場合があるので要注意

 溶接にはあまり向かず、ろう付け・接着が主流



非鉄金属の選定ガイド|失敗しないためのポイント


📌 材料特性 × 製品要件で考える

要件

推奨材料

理由

軽くしたい

アルミ

重量1/3で設計自由度アップ

通電・放熱が必要

電気・熱ともに最適

高精度で加工したい

真鍮(快削)

切削性抜群、量産向け

外観を重視

真鍮 or アルマイト処理アルミ

高級感と見栄えの両立

耐食性重視

アルミ or 銅

環境や薬品により選定



まとめ|非鉄金属は「目的に応じて賢く使い分ける」時代


非鉄金属は、鉄では補えない性能を持つプロフェッショナルな素材です。 材料選定では、以下を意識しておくと判断ミスを防げます。


✅ チェックポイント


  1. 使用環境(腐食・電気・熱・外観)

  2. 加工方法(切削、曲げ、ろう付け、鍛造)

  3. コストと調達性(在庫の有無、納期、RoHS対応)


🔧非鉄金属の特性を理解することで、 「鉄以外の選択肢を持つ=設計の幅が広がる」という強力な武器になります。


「軽くて強く、見た目も美しい部品を作りたい」「電気信号が通る構造体を設計したい」 そんなときは、ぜひ非鉄金属の特徴を思い出してください!

5月2日

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