Transfer Press
トランスファープレス
トランスファープレスとは、プレス加工において、ワークを工程ごとに搬送しながら、複数の加工を連続して行う加工方法です。
材料を帯状につなげたまま加工する順送プレスとは異なり、トランスファープレスでは、ワークを材料から切り離した状態、または独立したブランク材として扱い、搬送装置によって次の工程へ移動させます。
各工程では、絞り、抜き、曲げ、トリミング、穴あけ、フランジ成形、リストライクなどを順番に行います。自動車部品、家電部品、容器部品、深絞り部品、大型板金部品などの量産に多く使われます。
■トランスファープレスの仕組み
トランスファープレスでは、複数の金型工程を1台のプレス機内、または連続したプレスライン内に配置します。
ワークは、フィンガー、バー、ロボット、搬送アームなどのトランスファー装置によって、1工程目から2工程目、3工程目へと順番に搬送されます。各ステーションで加工を受け、最終工程で完成形状に近い製品になります。
材料が帯状につながっていないため、工程ごとにワークの姿勢を変えたり、深い絞りや複雑な成形を行ったりしやすい点が特徴です。
■トランスファープレスの目的
トランスファープレスの目的は、複雑形状や大型部品を効率よく量産することです。
深絞りや立体成形では、1回のプレスだけで完成形状にすることが難しい場合があります。そのため、複数の工程に分けて少しずつ成形する必要があります。
トランスファープレスでは、各工程を自動搬送でつなげられるため、手作業でワークを移し替える必要が少なくなります。これにより、生産性、品質安定性、安全性を高めることができます。
■トランスファープレスの主な用途
トランスファープレスは、自動車部品、家電部品、金属容器、モーターケース、電池ケース、カバー部品、シェル部品、深絞り部品などに使われます。
自動車分野: 車体部品、補強部品、ブラケット、シート部品、構造部品、オイルパンなどで使用されます。
家電分野 : 洗濯機、冷蔵庫、空調機器、調理機器などの筐体部品やカバー部品に使われます。
特に、
◆深さのある形状、大きな絞り形状、複数方向の曲げや成形を含む部品では、トランスファープレスが有効です。
■トラ ンスファープレスのメリット
トランスファープレスのメリットは、複雑な立体形状を連続的に加工できることです。
順送プレス → 材料が帯状につながっているため、深い絞りや大型部品では
制約が出る場合があります。
トランスファープレス→ ワークを独立して搬送できるため、より自由度の高い成形が可能です。
また、手作業による工程間搬送を減らせるため、生産効率が向上します。
量産時には、品質のばらつき低減、作業安全性の向上、
人手不足対策にもつながります。
さらに、複数工程を自動化できるため、安定したタクトで生産しやすい点も大きなメリットです。
■トランスファープレスのデメリット
トランスファープレスのデメリットは、設備費と金型費が高くなりやすいことです。
複数工程の金型に加え、ワークを正確に搬送するトランスファー装置が必要になります。そのため、少量生産や試作品には向かない場合があります。
また、工程間の搬送タイミング、ワークの保持姿勢、金型との干渉を正確に設計する必要があります。搬送不良が起きると、ワークの位置ズレ、打痕、変形、設備停止につながる可能性があります。
◆製品形状の変更にもコストがかかるため、形状が安定した量産品に向いた加工方法です。
■順送プレスとの違い
順送プレスは、コイル材や帯状材料を一定ピッチで送りながら、材料がつながった状態で複数工程を加工します。小型部品や薄板部品、端子、金具などの高速量産に適しています。
一方、トランスファープレスは、ワークを切り離した状態で工程間搬送します。そのため、深絞り部品、大型部品、複雑な立体成形品に向いています。
簡単に言えば、順送プレスは「材料をつなげたまま送る加工」、トランスファープレスは「ワークを1個ずつ持ち替えて送る加工」です。
■単発プレスとの違い
単発プレスは、1つの金型で1工程ずつ加工する方法です。段取り替えや作業者によるワークセットが必要になることが多く、試作や小ロットに向いています。
トランスファープレスは、複数工程を自動搬送で連結するため、量産性が高く、工程間のばらつきを抑えやすい加工方法です。
ただし、初期投資はトランスファープレスの方が大きくなります。少量生産では単発プレス、量産で複雑形状を安定生産したい場合はトランスファープレスが適しています。
■トランスファープレスに適した材料
トランスファープレスでは、鉄、ステンレス、アルミ、銅、真鍮などの板材が使われます。
深絞りや成形を伴う場合は、伸びがよく、割れにくい材料が適しています。
軟鋼板 : 比較的成形しやすく、自動車部品や一般部品に広く使われます。
ステンレス : 耐食性に優れますが、加工硬化しやすく、割れやスプリングバックに注意が必要です。
アルミ : 軽量化に有効ですが、材質によって成形性や傷つきやすさが異なります。
■トランスファープレスで発生しやすい不良
トランスファープレスで発生しやすい不良には、割れ、しわ、板厚減少、寸法ばらつき、搬送傷、打痕、位置ズレ、かじり、スプリングバックがあります。
深絞りや成形では、材料の流れが不適切だと割れやしわが発生します。搬送時にワークの保持が不安定だと、次工程で位置ズレが起こり、寸法不良や金型干渉につながります。
また、ワークをつかむフィンガーや搬送アームによって、表面に傷や打痕が残る場合もあります。外観部品では特に注意が必要です。
■トランスファープレスの注意点
トランスファープレスでは、金型設計だけでなく、搬送設計が非常に重要です。
ワークをどの位置でつかむか、どの姿勢で搬送するか、工程間で反転や回転が必要かを検討する必要があります。搬送経路に無理があると、ワークの変形や設備停止につながります。
また、各工程の加工量を適切に分散することも重要です。1工程に負荷が集中すると、割れ、しわ、寸法不良が発生しやすくなります。
◆量産中は、金型摩耗、搬送位置、潤滑状態、スクラップ排出を定期的に管理する必要があります。
■図面指示で注意すべきこと
図面では、材質、板厚、外形寸法、深さ、角R、穴位置、曲げ角度、表面品質、公差を明確に指定します。
トランスファープレスでは、工程ごとに材料が変形していくため、完成品で重要となる基準面や重要寸法を明確にすることが大切です。
外観部品 → 搬送傷、打痕、しわ、押し跡の許容範囲も確認しておく必要があります。
絞り部品 → 角Rや板厚減少の許容範囲も重要です。
■まとめ
トランスファープレスとは、ワークを工程ごとに搬送しながら、絞り、抜き、曲げ、穴あけ、成形などを連続して行う量産向けプレス加工です。
ワークを独立して搬送できるため、深絞り品、大型部品、複雑な立体形状の加工に適しています。自動車部品、家電部品、電池ケース、容器部品などで広く使われます。
一方で、設備費・金型費が高く、搬送設計や金型設計の難易度も高いため、形状が安定した量産品に向いています。
トランスファープレスを成功させるには、材料選定、工程設計、搬送精度、金型管理、量産中のメンテナンスを総合的に管理することが重要です。
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