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Tempering

焼き戻し

焼き戻しとは、焼き入れによって硬くなった鋼材を再び一定温度に加熱し、その後冷却することで、硬さ・粘り強さ・靭性を調整する熱処理です。


焼き入れを行った鋼材は、硬度が大きく上がる一方で、内部応力が残り、脆く割れやすい状態になります。そのまま使用すると、衝撃や荷重によって割れ、欠け、破損が発生する可能性があります。焼き戻しは、この脆さを緩和し、実用的な強度と粘りを持たせるために行われます。


機械部品、シャフト、ギア、金型、工具、刃物、ピン、ばね部品など、焼き入れ後に性能を安定させたい部品では、焼き戻しがほぼセットで実施されます。



■焼き戻しの主な目的

目的

内容

主な効果

脆さの低減

焼き入れ後の割れやすさを抑える

衝撃に強くなる

内部応力の緩和

急冷で発生した応力を低減する

歪み・割れのリスクを抑える

靭性向上

粘り強さを持たせる

破損しにくくなる

硬度調整

用途に応じた硬さに下げる

加工性・耐久性を最適化

寸法安定性向上

組織を安定させる

使用中の変形を抑える

焼き戻しは、単に硬度を下げる処理ではありません。焼き入れで得た硬さを活かしながら、部品として使える粘りや安定性を与える重要な熱処理です。



■焼き戻しの基本工程

工程

内容

焼き入れ

鋼材を加熱後に急冷し、硬化させる

焼き戻し加熱

指定温度まで再加熱する

保持

材料内部まで温度を均一にする

冷却

空冷、油冷、水冷などで冷却する

検査

硬度、歪み、割れ、寸法を確認する

焼き戻し温度と保持時間によって、最終的な硬度や靭性が変わります。一般的に、焼き戻し温度が高くなるほど硬度は低下し、粘り強さは向上します。



■焼き戻し温度と特徴

焼き戻し温度帯

特徴

主な用途

低温焼き戻し

硬度を高く保ちながら脆さを軽減

刃物、工具、ゲージ、金型部品

中温焼き戻し

硬度と靭性のバランスを取る

ばね、ピン、機械部品

高温焼き戻し

靭性を高め、強度を安定させる

シャフト、ギア、構造部品

調質処理

焼き入れ後に高温焼き戻しを行う

SCM材、S45Cなどの機械部品

部品に求められる性能によって、焼き戻し温度は大きく変わります。刃物や金型のように硬さを重視する場合は低温焼き戻し、シャフトやギアのように強度と粘りが必要な場合は高温焼き戻しが選ばれます。



■焼き入れと焼き戻しの違い

処理

内容

主な目的

焼き入れ

高温加熱後に急冷する

硬度・強度を高める

焼き戻し

焼き入れ後に再加熱する

脆さを抑え、靭性を調整する

焼きなまし

加熱後にゆっくり冷却する

軟化、加工性向上、応力除去

焼きならし

加熱後に空冷する

組織を均一化し、機械的性質を整える

焼き入れは「硬くする処理」、焼き戻しは「硬さを実用的な状態に整える処理」と考えると分かりやすいです。焼き入れだけでは硬くても脆く、焼き戻しを行うことで部品として使いやすい性質になります。



■焼き戻しのメリット


焼き戻しの最大のメリットは、焼き入れ後の脆さを抑え、部品の信頼性を高められることです。


  • 焼き入れ直後の鋼材は非常に硬い反面、内部応力が高く、衝撃に弱い状態です。

       ↓

    焼き戻しを行うことで、割れや欠けのリスクを低減できます。


  • 焼き戻し温度を調整することで、用途に合わせた硬度と靭性のバランスを作れます。

     ↓

  金型部品では耐摩耗性を重視して硬度を高めに残し、

  機械構造部品では粘りを重視してやや硬度を下げることがあります。


  • 寸法安定性の向上にも効果があります。内部応力を緩和することで、使用中や後加工時の歪みを抑えやすくなります。



■焼き戻しの注意点


焼き戻しでは、温度管理が非常に重要です。


  • 温度が低すぎると脆さが十分に取れず、割れや欠けが発生しやすくなります。


  • 逆に温度が高すぎると、硬度が下がりすぎて、耐摩耗性や強度が不足する場合があります。


  • 材料によっては「焼き戻し脆性」と呼ばれる現象に注意が必要です。特定の温度範囲で焼き戻しを行うと、靭性が低下し、脆くなることがあります。特に合金鋼では、材質や用途に応じた温度条件の選定が重要です。


  • 焼き戻し後の硬度だけでなく、歪み、割れ、寸法変化も確認する必要があります。精密部品や金型部品では、熱処理後に研削加工や放電加工で仕上げることもあります。



■焼き戻しが使われる材料

材料

特徴

主な用途

S45C

機械構造用炭素鋼。調質処理に使われる

シャフト、ピン、機械部品

SCM440

強度・靭性に優れるクロムモリブデン鋼

軸、ギア、ボルト

SKD11

高硬度・耐摩耗性に優れる冷間工具鋼

金型、パンチ、ダイ

SKD61

耐熱性・靭性に優れる熱間工具鋼

ダイカスト金型、熱間金型

SKH51

高温硬度に優れる高速度工具鋼

切削工具、パンチ

SUJ2

高炭素クロム軸受鋼

ベアリング、ころ、精密部品

焼き戻し条件は、材料ごとに適正範囲が異なります。図面指定や材料メーカーの熱処理条件を確認し、必要硬度と用途に合わせて設定することが重要です。



■製造現場での活用例

分野

使用例

機械部品

シャフト、ギア、ピン、ローラー

金型部品

パンチ、ダイ、入れ子、スライド部品

工具

刃物、ドリル、エンドミル、ゲージ

自動車部品

軸、ボルト、歯車、摺動部品

ばね部品

板ばね、コイルばね、弾性部品

精密部品

高硬度ピン、治具、位置決め部品

焼き戻しは、焼き入れ後の部品を安全に使用するために欠かせない処理です。硬さだけでなく、衝撃、摩耗、荷重、寸法安定性を考慮して条件を決める必要があります。



■SEO向けまとめ


焼き戻しとは、焼き入れ後の鋼材を再加熱し、硬度・靭性・内部応力を調整する熱処理です。焼き入れで硬くなった鋼材は脆くなりやすいため、焼き戻しによって割れや欠けを防ぎ、部品として実用的な強度と粘りを持たせます。


シャフト、ギア、金型、工具、ピン、ばね部品など、焼き入れを行う多くの部品で必要とされます。


適切な焼き戻し条件を選ぶことで、耐摩耗性、強度、靭性、寸法安定性をバランスよく確保できます。熱処理品質を安定させるには、材料、焼き戻し温度、保持時間、冷却方法、硬度検査を総合的に管理することが重要です。

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