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Residual Stress

残留応力

残留応力とは、外部から力が加わっていない状態でも、材料や部品の内部に残っている応力のことです。


切削加工、研削加工、溶接、鋳造、鍛造、曲げ加工、熱処理、プレス加工、表面処理など、さまざまな製造工程で発生します。

通常、部品に荷重をかけると応力が発生し、荷重を取り除くと応力もなくなるように思われます。しかし実際には、加工時の塑性変形、急激な加熱・冷却、相変態、表面と内部の変形差などによって、部品内部に応力が残ることがあります。これが残留応力です。


残留応力は、必ずしも悪いものではありません。たとえば、ショットピーニングや窒化処理では、表面に圧縮残留応力を与えることで疲労強度を高めることがあります。一方で、引張残留応力が大きい場合は、反り、歪み、割れ、応力腐食割れ、寸法変化、加工後変形の原因になります。



■残留応力の主な種類

種類

内容

主な影響

引張残留応力

材料内部に引っ張る方向の応力が残る

割れ・クラック・応力腐食割れの原因

圧縮残留応力

表面を押し縮める方向の応力が残る

疲労強度向上に有利な場合がある

熱残留応力

加熱・冷却時の温度差で発生する

溶接歪み、熱処理歪み

加工残留応力

切削・研削・曲げなどで発生する

反り、寸法変化、後変形

相変態応力

焼き入れなどの組織変化で発生する

割れ、硬度ムラ、歪み

残留応力は、方向や分布によって部品への影響が異なります。表面の圧縮残留応力は有利に働く場合がありますが、表面や内部に大きな引張残留応力があると、割れの起点になりやすくなります。



■残留応力が発生する主な原因

原因

内容

発生しやすい工程

不均一な塑性変形

一部だけが強く変形する

曲げ、プレス、鍛造

急激な加熱・冷却

表面と内部で膨張・収縮差が出る

溶接、焼き入れ、熱処理

切削加工

表面層に加工ひずみが残る

旋盤、フライス、マシニング

研削加工

研削熱と機械的変形が重なる

研削仕上げ、焼入れ品加工

溶接収縮

溶接部が冷却時に収縮する

製缶、配管、フレーム

鋳造・鍛造

冷却差や成形履歴が残る

鋳物、鍛造品

表面処理

表面層の改質や皮膜形成で応力が生じる

メッキ、窒化、ショットピーニング

残留応力は、材料全体が均一に変形・加熱・冷却されないことで発生します。特に溶接や焼き入れのように局所的な熱影響が大きい工程では、残留応力が大きくなりやすい傾向があります。



■残留応力による主な不具合

不具合

内容

影響

反り・歪み

加工後や切断後に形状が変わる

寸法不良、組付け不良

クラック

応力集中部から割れが発生する

強度低下、破損

応力腐食割れ

腐食環境と引張応力が重なる

突然破断、漏れ

研削割れ

研削熱と残留応力で微細割れが発生

品質不良、寿命低下

熱処理歪み

焼き入れ後に寸法や形状が変化する

後加工工数増加

経時変形

時間経過や使用中に変形する

精度低下

加工後変形

荒加工後や片面加工後に反る

仕上げ精度不良

残留応力は、加工直後には見えない場合があります。切断、穴あけ、片面切削、熱処理、使用中の温度変化などをきっかけに、内部応力のバランスが崩れて変形が現れることがあります。



■残留応力が問題になりやすい部品

部品・材料

問題になりやすい理由

薄板部品

わずかな応力でも反りや波打ちが出やすい

長尺シャフト

曲がりや振れが発生しやすい

溶接フレーム

溶接収縮により歪みや応力が残りやすい

精密プレート

片面加工や研削で平面度が変化しやすい

焼入れ部品

急冷と組織変化で応力が残りやすい

鋳物・鍛造品

冷却差や成形履歴が内部に残りやすい

ステンレス部品

加工硬化や溶接熱影響で応力が残りやすい

精密加工では、残留応力を考慮せずに片側だけを大きく削ると、加工後に反りが出ることがあります。高精度部品では、荒加工後に応力除去を行い、その後に仕上げ加工する工程設計が有効です。



■残留応力を低減する方法

方法

内容

効果

応力除去焼きなまし

加熱により内部応力を緩和する

反り・歪み・割れを抑える

焼きならし

組織を均一化し応力を整える

鋳造品・鍛造品の品質安定

工程分割

荒加工と仕上げ加工を分ける

加工後変形を抑える

対称加工

両面をバランスよく削る

片側応力解放による反りを防ぐ

溶接順序管理

対称溶接・分散溶接を行う

溶接歪みを低減

徐冷

急冷を避けて温度差を小さくする

熱応力を抑える

適切な固定

加工・溶接時の拘束を管理する

変形を抑える

残留応力対策では、後から修正するよりも、発生を抑える工程設計が重要です。特に精密部品や溶接構造品では、加工順序・熱処理・固定方法を事前に検討する必要があります。



■残留応力を有効利用する例

処理・方法

内容

効果

ショットピーニング

表面に粒子を衝突させる

圧縮残留応力で疲労強度向上

窒化処理

表面に窒素を浸透させる

表面硬化と圧縮応力付与

浸炭焼き入れ

表面硬化層を形成する

歯車などの疲労強度向上

ローラーバニシング

表面を押しならす

表面粗さ改善と圧縮応力付与

表面冷間加工

表面層を塑性変形させる

クラック発生を抑える

残留応力は、すべて除去すべきものではありません。表面に適切な圧縮残留応力を与えることで、疲労クラックの発生を抑え、部品寿命を延ばせる場合があります。



■残留応力と歪みの違い

項目

残留応力

歪み

意味

材料内部に残っている応力

形状や寸法が変化した状態

見え方

直接見えにくい

反り・曲がりとして見える

原因

加工、溶接、熱処理、塑性変形

残留応力の解放、熱変形、外力

影響

割れ、後変形、応力腐食割れ

寸法不良、組付け不良

対策

応力除去、工程管理、対称加工

矯正、再加工、設計見直し

残留応力は内部に残る力であり、歪みはその結果として現れる形状変化です。残留応力があっても外観上は歪んでいない場合がありますが、後工程で応力が解放されると変形することがあります。



■残留応力の検査・確認方法

方法

内容

特徴

X線応力測定

X線回折を利用して表面応力を測定

非破壊で表面応力を評価

穴あけ法

小穴をあけて応力解放量を測定

比較的実用的な測定方法

切断確認

部品を切断し、変形量を見る

簡易的な応力有無確認

ひずみゲージ法

ひずみ変化を測定する

実験・解析向け

硬度・組織観察

加工硬化や熱影響を確認する

間接的な評価

変形観察

加工後・熱処理後の反りを確認

現場で実施しやすい

残留応力は目視では判断できないため、重要部品では専用の測定や、加工後変形の確認を行います。現場では、荒加工後に時間を置く、切断して反りを見るなどの方法で傾向を確認することもあります。



■製造現場での活用例

分野

管理ポイント

切削加工

荒加工後の応力解放、対称加工、仕上げ代管理

研削加工

研削熱、研削割れ、表面引張応力の管理

溶接加工

溶接順序、拘束、応力除去焼きなまし

熱処理

焼き入れ歪み、冷却速度、焼き戻し条件

鋳造・鍛造

冷却ムラ、組織不均一、焼きならし

精密部品

平面度、真直度、経時変形の管理

表面改質

圧縮残留応力による疲労強度向上

残留応力管理は、高精度部品や長寿命部品の製作で非常に重要です。特に、精密プレート、シャフト、金型、溶接架台では、工程途中で応力を抜くかどうかが最終精度に大きく影響します。



■残留応力指定時・対策時のポイント

確認項目

内容

材料状態

圧延材、鍛造材、鋳物、熱処理材か確認する

加工量

片側だけを大きく削らないか確認する

熱影響

溶接・焼き入れ・研削熱の影響を確認する

精度要求

平面度、真直度、同軸度などの要求を確認する

応力除去

焼きなましや焼きならしの必要性を検討する

後加工

応力除去後に仕上げ加工を行うか確認する

使用環境

応力腐食割れが起きる環境か確認する

図面や工程指示では、「応力除去焼きなまし後仕上げ加工」「溶接後SR処理」「荒加工後時効処理」などと記載されることがあります。必要な精度や使用環境に応じて、残留応力対策を工程に組み込むことが重要です。



■SEO向けまとめ


残留応力とは、外力が加わっていない状態でも材料内部に残っている応力のことです。切削加工、研削加工、溶接、鋳造、鍛造、曲げ加工、焼き入れなどで発生し、反り、歪み、クラック、応力腐食割れ、加工後変形、経時変形の原因になります。


一方で、ショットピーニングや窒化処理のように、表面に圧縮残留応力を与えることで疲労強度を向上させる場合もあります。残留応力を管理するには、応力除去焼きなまし、焼きならし、対称加工、工程分割、溶接順序管理、徐冷などが有効です。


高精度部品や溶接構造品では、残留応力を考慮した工程設計が品質安定の重要ポイントになります。

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