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Hastelloy

ハステロイ

ハステロイとは、ニッケルを主成分とし、モリブデン、クロム、鉄、コバルトなどを加えた高耐食性のニッケル基合金です。


一般的なステンレス鋼では耐えにくい、強酸、塩化物、腐食性ガス、高温腐食環境などで使用されます。特に、化学プラント、薬品設備、反応槽、熱交換器、排ガス処理装置、海洋設備など、腐食リスクが高い分野で採用される高機能材料です。


インコネルが「耐熱性・高温強度」に強い材料として使われることが多いのに対し、ハステロイは「耐食性」を重視する用途で選ばれることが多い材料です。



■ハステロイの基本情報


項目

内容

材料分類

ニッケル基耐食合金

英語表記

Hastelloy / Nickel-Based Corrosion Resistant Alloy

主成分

ニッケル、モリブデン、クロム、鉄など

特徴

高耐食性、耐酸性、耐塩化物性、耐すき間腐食性

主な用途

化学設備、反応槽、配管、熱交換器、排ガス処理装置

注意点

材料費、加工難易度、溶接条件、グレード選定

  1. ■ハステロイの特徴


ハステロイの最大の特徴は、非常に高い耐食性です。


ステンレス鋼では腐食が問題になる塩酸、硫酸、リン酸、塩化物、湿潤塩素ガス、酸化性・還元性の薬液環境などでも、グレードによって優れた耐久性を発揮します。


特に、モリブデンを多く含むグレードは、孔食やすき間腐食に強く、薬品接触部や海水環境にも使用されます。


ただし、

◆ハステロイにも複数の種類があり、すべての薬品や温度条件に万能というわけではありません。使用環境に合わせたグレード選定が重要です。



■ハステロイのメリット


メリット

内容

耐食性が非常に高い

強酸、塩化物、腐食性ガス環境に対応しやすい

孔食・すき間腐食に強い

ステンレスで問題になりやすい局部腐食を抑えやすい

化学設備に適する

反応槽、配管、熱交換器など薬液接触部に使いやすい

高温腐食に対応可能

グレードにより高温腐食環境でも使用できる

長寿命化に貢献

腐食による交換頻度や設備停止リスクを低減できる

■ハステロイのデメリット


ハステロイのデメリットは、材料費が非常に高いことです。


ニッケルやモリブデンなど高価な元素を多く含むため、ステンレスや一般鋼材に比べて材料単価が高くなります。また、難削材であるため、切削加工や穴あけ、ねじ加工にも時間とコストがかかります。


さらに、グレード選定を誤ると、期待した耐食性が得られない場合があります。


◆薬品濃度、温度、流速、酸化還元状態、すき間の有無などを確認したうえで選定することが重要です。



■ハステロイの主な種類



種類

特徴

Hastelloy C-276

幅広い腐食環境に対応しやすい代表的な耐食合金

Hastelloy C-22

酸化性環境や塩化物環境に強く、化学設備に使用

Hastelloy B-2

還元性酸、特に塩酸環境に強い

Hastelloy X

耐熱性・耐酸化性に優れ、高温部品に使用

Hastelloy G系

硫酸・リン酸など特定薬液環境で使われることがある

■ハステロイの主な用途


分野

主な用途

化学プラント

反応槽、撹拌翼、配管、バルブ、ポンプ部品

薬品設備

酸洗槽、薬液タンク、薬液配管、ノズル

排ガス処理

スクラバー、ダクト、排煙脱硫装置、腐食性ガス部品

熱交換器

チューブ、プレート、薬液接触部品

海洋・環境設備

海水接触部品、耐塩害部品、腐食環境部品

半導体・精密設備

薬液処理装置、洗浄装置、腐食性流体部品

■ハステロイの加工性


ハステロイは、代表的な難削材です。


高強度で粘りがあり、加工硬化しやすいため、切削加工では工具摩耗、発熱、びびり振動、仕上げ面不良に注意が必要です。工具がこすれるだけの状態になると、表面が硬化し、さらに加工が難しくなります。


加工には、剛性の高い設備、適切な工具材種、低めの切削速度、十分なクーラント、安定した切込みが重要です。


◆一般鋼材と同じ感覚で加工すると、工具寿命が極端に短くなる場合があります。



■ハステロイの溶接性


ハステロイは溶接可能ですが、グレードに応じた適切な溶接条件が必要です。


TIG溶接、MIG溶接、レーザー溶接などが使われます。化学設備では、溶接部も母材と同等の耐食性が求められるため、溶加材の選定、入熱管理、シールド管理が重要になります。


溶接部の欠陥や熱影響部の性質変化は、腐食の起点になる可能性があります。


◆重要部品では、浸透探傷、放射線検査、リーク試験、耐圧試験などの検査を行うことがあります。



■ハステロイとステンレスの違い

項目

ハステロイ

ステンレス

主成分

ニッケル系

鉄・クロム系

耐食性

非常に高い

一般耐食用途に強い

薬品環境

強酸・塩化物環境に対応しやすい

条件により腐食しやすい

コスト

高い

比較的安価

加工性

難しい

ハステロイより加工しやすい

主な用途

化学設備、薬品配管、反応

食品、医療、建築、一般機械

■ハステロイとインコネルの違い


インコネルは、耐熱性や高温強度を重視するニッケル基合金として使われることが多い材料です。航空機エンジン、タービン、熱処理炉、高温排気部品などで採用されます。


一方、ハステロイは、耐食性を重視するニッケル基合金として使われることが多く、酸、塩化物、腐食性ガスを扱う設備に適しています。


◆高温強度を重視するならインコネル、薬品や腐食環境を重視するならハステロイが選ばれる傾向があります。



■ハステロイの注意点


ハステロイでは、使用環境に合ったグレード選定が最も重要です。


同じハステロイでも、C-276、C-22、B-2、Xなどでは得意な環境が異なります。酸の種類、濃度、温度、不純物、酸化性・還元性、流速、すき間構造によって腐食挙動が変わります。


また、高価な材料であるため、すべてをハステロイにするのではなく、腐食が厳しい接液部だけに使用する、ライニングやクラッド材を検討するなど、コスト最適化も重要です。



■図面指示で注意すべきこと


図面では、「ハステロイ」とだけ記載せず、具体的なグレードを明記することが重要です。


例えば、「Hastelloy C-276」「Hastelloy C-22」「Hastelloy B-2」など、材料グレードを指定します。

化学設備や圧力容器では、材料証明書、成分証明、溶接仕様、非破壊検査、耐圧試験、リーク試験の指定も必要になる場合があります。


また、接液面の表面粗さ、溶接ビード仕上げ、酸洗い、洗浄条件も明確にすると、腐食トラブルを防ぎやすくなります。



■まとめ


ハステロイは、ニッケルを主成分とする高耐食性合金です。強酸、塩化物、腐食性ガス、薬液環境に強く、化学プラント、反応槽、配管、熱交換器、排ガス処理装置、海洋設備などで使用されます。


ステンレスでは腐食が問題になる環境でも性能を発揮しやすい一方で、材料費と加工費は高く、グレード選定にも注意が必要です。


ハステロイを適切に使うには、薬品の種類、濃度、温度、腐食条件、具体的なグレード、溶接仕様、検査条件を明確にすることが重要です。高腐食環境で設備寿命を高めるための代表的な高機能材料です。

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