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Geometric Tolerance

幾何公差

幾何公差とは、部品の「形状」「姿勢」「位置」「振れ」などを管理するために図面上で指定する公差です。

通常の寸法公差は、長さ、幅、穴径、厚みなどの寸法範囲を管理します。


一方、幾何公差は、面がどれだけ平らか、穴の位置がどれだけ正確か、軸がどれだけ同心か、面同士がどれだけ直角かといった、部品の形状品質を管理します。


機械部品、精密加工部品、金型部品、治具、組立部品、回転部品などでは、寸法だけが合っていても組み付かない、回転時に振れる、密着しない、位置がずれるといった問題が発生します。


こうしたトラブルを防ぐために幾何公差が使われます。



■幾何公差の基本情報

項目

内容

分類

図面指示・品質管理・寸法管理

英語表記

Geometric Tolerance / GD&T

管理対象

形状、姿勢、位置、振れ

主な用途

精密部品、機械部品、金型、治具、組立部品

関連規格

JIS、ISO GPS、ASME Y14.5など

主な記号

真直度、平面度、真円度、直角度、位置度、同軸度、振れなど

注意点

データム設定、測定方法、加工基準、過剰指定


■幾何公差が必要な理由


幾何公差が必要な理由は、寸法公差だけでは部品の機能を十分に保証できないためです。


例えば、穴径が公差内でも、穴の位置がずれていればボルトが入らない場合があります。面の寸法が合っていても、面が反っていれば相手部品と密着しません。軸の直径が正しくても、軸が曲がっていれば回転時に振れが発生します。

幾何公差を使うことで、部品が実際に機能するために必要な形状精度や位置関係を明確に指定できます。



■幾何公差の主な種類

分類

主な幾何公差

管理内容

形状公差

真直度、平面度、真円度、円筒度

単独形体の形そのものを管理

姿勢公差

平行度、直角度、傾斜度

基準に対する向きや角度を管理

位置公差

位置度、同軸度、同心度、対称度

基準に対する位置関係を管理

輪郭度

線の輪郭度、面の輪郭度

複雑形状や曲面の形状を管理

振れ公差

円周振れ、全振れ

回転時の振れや軸精度を管理


■形状公差とは


形状公差とは、

  • 部品単体の形状そのものを管理する幾何公差です。


代表的なものに、真直度、平面度、真円度、円筒度があります。これらは基本的にデータムを必要とせず、その形体自体がどれだけ正しい形になっているかを評価します。


例えば、平面度は面がどれだけ平らかを管理し、真円度は円形断面がどれだけ正しい円に近いかを管理します。精密な密着面、摺動面、軸、穴などで重要になります。



■姿勢公差とは


姿勢公差とは、

  • 基準となる面や軸に対して、対象面や対象軸がどの向きにあるかを管理する幾何公差です。


代表的なものに、平行度、直角度、傾斜度があります。

これらは、データムと呼ばれる基準が必要になります。


例えば、ブラケットの取付面に対して穴軸が直角でなければ、ボルトが斜めに入ったり、相手部品が正しく組み付かなかったりします。姿勢公差は、組立精度や機械動作の安定に重要です。



■位置公差とは


位置公差とは、

  • 穴、軸、溝、面などが、基準に対してどの位置にあるかを管理する幾何公差です。


代表的なものに、位置度、同軸度、同心度、対称度があります。特に位置度は、ボルト穴、ピン穴、軸穴などの位置管理で非常によく使われます。


例えば、複数のボルト穴がある部品では、穴径だけでなく、穴同士の位置関係が重要です。位置度を指定することで、組立時の穴ズレや干渉を防ぎやすくなります。



■輪郭度とは


輪郭度とは、

  • 線や面の形状が理想形状からどれだけずれてよいかを管理する幾何公差です。


線の輪郭度は断面線の形状を管理し、面の輪郭度は立体的な面全体の形状を管理します。曲面、自由曲面、鋳物形状、樹脂成形品、プレス成形品などで使われることがあります。


複雑な形状を寸法公差だけで細かく指定すると図面が煩雑になりますが、輪郭度を使うことで、形状全体の許容範囲を管理しやすくなります。


■振れ公差とは


振れ公差とは、

  • 部品を基準軸で回転させたときの振れ量を管理する幾何公差です。


代表的なものに、円周振れと全振れがあります。シャフト、フランジ、ローラー、回転軸、プーリー、ギアなど、回転する部品で重要です。


振れが大きいと、回転時に振動、異音、摩耗、偏荷重、シール不良が発生する場合があります。回転精度が必要な部品では、寸法公差だけでなく振れ公差の指定が重要です。



■データムとは


データムとは、

  • 幾何公差を評価するための基準となる面、軸、点のことです。


図面では、A、B、Cなどの記号で指定されることが多く、測定や加工の基準になります。例えば、「基準面Aに対して直角度0.05」と指定すれば、A面を基準として対象面や穴軸の直角度を評価します。


データム設定が曖昧だと、加工者と検査者で基準の取り方が変わり、同じ部品でも合否判断が変わる可能性があります。そのため、幾何公差ではデータム設計が非常に重要です。



■幾何公差と寸法公差の違い

項目

幾何公差

寸法公差

管理対象

形状、姿勢、位置、振れ

長さ、幅、厚み、穴径など

目的

部品の機能や組立性を保証する

寸法範囲を管理する

基準

データムを使う場合が多い

寸法線を基準にする

平面度0.05、位置度0.1、直角度0.03

50±0.1、φ10±0.02

注意点

測定方法の理解が必要

比較的分かりやすい


寸法公差は「大きさ」を管理し、幾何公差は「形と位置関係」を管理します。高品質な部品設計では、両方を適切に使い分けることが重要です。



■幾何公差のメリット

メリット

内容

機能を明確に保証できる

組付け、回転、密着、位置決めに必要な精度を指定できる

図面意図が伝わりやすい

どの面や穴が重要かを明確にできる

測定基準を統一できる

データムにより検査基準を明確にできる

不良や組立トラブルを減らせる

穴ズレ、反り、振れ、傾きを管理できる

過剰な寸法公差を避けやすい

機能上必要な箇所だけを適切に管理できる


■幾何公差のデメリット


幾何公差のデメリットは、理解や測定に専門知識が必要なことです。


記号の意味、データムの取り方、測定方法、測定治具、三次元測定機の使い方を理解していないと、正しく評価できません。


また、必要以上に厳しい幾何公差を指定すると、加工コストや検査コストが大きく上がります。公差は厳しければ良いわけではなく、部品の機能に必要な範囲で適切に設定することが重要です。



■幾何公差が使われる主な用途

分野

主な用途

機械部品

軸、穴、取付面、摺動面、回転部品

金型部品

パンチ、ダイ、ガイド、基準プレート

治具

位置決めピン穴、基準面、検査基準

自動車部品

ブラケット、フランジ、ギア、シャフト

精密機器

ベース、ホルダー、光学部品、測定部品

板金部品

取付穴、曲げ面、組立基準面

ロボット部品

フランジ、アーム、軸受部、取付面


■幾何公差で発生しやすいトラブル


幾何公差で発生しやすいトラブルには、基準面の解釈違い、測定方法の違い、過剰公差、検査不能な指示、加工基準との不一致があります。


例えば、図面上ではデータムAを指定していても、実際の加工では別の面を基準にしていると、検査時に不合格になる場合があります。


また、測定しにくい箇所に厳しい幾何公差を指定すると、加工できても検査できない、検査に時間がかかる、測定者によって結果がばらつくといった問題が起こります。



■幾何公差の注意点


幾何公差を指定する際は、部品の機能、組立基準、加工基準、検査基準を一致させることが重要です。


どの面で相手部品に当たるのか、どの穴で位置決めするのか、どの軸が回転基準になるのかを考え、その機能に必要な箇所へ公差を指定します。


また、測定可能かどうかも重要です。三次元測定機、ハイトゲージ、ダイヤルゲージ、専用ゲージなど、現実的に測定できる方法を想定して図面化することが大切です。



■図面指示で注意すべきこと


図面では、幾何公差記号、公差値、データム、適用範囲を明確に記載します。


例えば、「位置度φ0.1|A|B|C」のように、どの基準に対してどれだけの位置ズレを許容するのかを指定します。平面度のようにデータムを使わない公差もあれば、直角度や位置度のようにデータムが必要な公差もあります。


また、重要でない箇所まで細かく指定するとコスト増につながります。機能上重要な面・穴・軸に絞って、適切な公差値を設定することが重要です。



■まとめ


幾何公差とは、部品の形状、姿勢、位置、振れを管理するための図面指示です。寸法公差だけでは管理しきれない、平面度、直角度、位置度、同軸度、円周振れなどを明確に指定できます。


機械部品、金型、治具、回転部品、組立部品では、部品の機能や組付け精度を保証するために重要です。


一方で、幾何公差はデータム設定、測定方法、加工基準を正しく理解して使う必要があります。過剰に厳しい指定はコスト増につながるため、部品の機能に必要な箇所へ適切に指定することが大切です。

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