Fit Tolerance
はめあい公差
はめあい公差とは、穴と軸など、互いに組み合わさる部品同士の寸法関係を管理する公差です。
例えば、穴にピンを入れる、軸にベアリングを取り付ける、ブッシュを圧入する、シャフトにギアを固定する場合、穴径と軸径の差によって「すきまがある」「軽く入る」「強く押し込む必要がある」といった状態が決まります。
このような組付け状態を図面上で管理するために使われるのが、はめあい公差です。
代表的な表記には、H7、g6、h6、H7/g6、H7/p6、H7/js6などがあります。
■はめあい公差の基本情報
項目 | 内容 |
分類 | 寸法公差・組立公差 |
英語表記 | Fit Tolerance / Limits and Fits |
主な対象 | 穴と軸、ピンと穴、ベアリングと軸、ブッシュと穴 |
主な目的 | すきま、しまり、組付け性、回転性、固定力の管理 |
代表表記 | H7、h6、g6、p6、js6など |
関連規格 | JIS、ISO 286など |
注意点 | 用途、荷重、温度、材質、表面粗さ、加工方法 |
■はめあい公差の考え方
はめあい公差では、穴と軸の寸法差によって組付け状態を決めます。
穴が軸より大きければ、すきまが生まれます。これにより、軸が回転したり、部品を簡単に抜き差し したりできます。
反対に、軸が穴より大きければ、組み立てる際に圧入や加熱・冷却が必要になります。この状態では、部品同士が強く固定されます。
つまり、
◆はめあい公差は「どれくらいのゆるさ・きつさで組み合わせるか」を設計するための考え方です。
■はめあいの主な種類
種類 | 内容 | 主な用途 |
すきまばめ | 穴が軸より大きく、必ずすきまができる | 回転部、摺動部、抜き差し部 |
中間ばめ | 条件により、すきままたは軽いしまりになる | 位置決め、軽い固定、精密組立 |
しまりばめ | 軸が穴より大きく、必ずしまりができる | 圧入、固定、抜け防止 |
■すきまばめとは
すきまばめとは、穴と軸を組み合わせたときに、必ずすきまができるはめあいです。
軸が穴の中で回転する、スライドする、手で抜き差しするような用途に使われます。
代表的な用途には、回転軸、ガイドピン、摺動部、位置決め後に分解する部品、治具の着脱部などがあります。
すきまが大きすぎるとガタつきが発生し、小さすぎると動きが重くなります。そのため、使用目的に応じた適切なすきま量を設定することが重要です。
■中間ばめとは
中間ばめとは、穴と軸の寸法ばらつきによって、わずかなすきまになる場合もあれば、軽いしまりになる場合もあるはめあいです。
強く圧入するほどではないが、ガタ つきを抑えたい場合に使われます。
位置決めピン、ノックピン、精密治具、分解頻度の少ない組立部品などで使用されることがあります。
中間ばめは、組付け性と位置決め精度のバランスを取るためのはめあいです。
■しまりばめとは
しまりばめとは、穴と軸を組み合わせたときに、必ずしまり代が発生するはめあいです。
軸が穴より大きいため、手では簡単に入らず、プレス圧入、焼きばめ、冷やしばめなどで組み立てます。
代表的な用途には、ブッシュの圧入、ベアリング外輪の固定、ギアやプーリーの固定、ピンの抜け止め、スリーブの固定などがあります。
しまりが強すぎると、部品の割れ、変形、圧入不良が発生します。弱すぎると、使用中に緩みや抜けが起こる可能性があります。
■H7とは
H7とは、穴基準の公差等級でよく使われる表記です。
「H」は穴の公差位置を示し、「7」は公差等級を示します。H穴は、一般的に下限寸法が基準寸法に一致する穴として使われます。
実務では、H7穴はリーマ加工、ボーリング加工、精密穴加工などでよく指定されます。ピン、ブッシュ、ベアリング、位置決め部品の穴公差として多く使われます。
■h6・g6・p6とは
軸側の公差では、h6、g6、p6などがよく使われます。
表記 | 一般的なイメージ |
h6 | 基準寸法より大きくならない軸。精密軸やはめあい部に使われる |
g6 | h6よりやや小さめの軸。すきまばめに使われやすい |
js6 | 基準寸法を中心に上下に公差を持つ軸 |
k6 | 中間ばめや軽いしまりに使われることがある |
p6 | しまりばめ・圧入用途に使われることがある |
実際のすきま・しまり量は、呼び寸法によって変わるため、公差表で確認する必要があります。
■はめあい公差のメリット
メリット | 内容 |
組付け状態を明確にできる | ゆるい・きついを数値で管理できる |
機能を安定させやすい | 回転、摺動、固定、位置決めを設計通りにできる |
加工業者と認識を合わせやすい | H7/g6などの表記で要求精度を共有できる |
不良を防ぎやすい | ガタ、圧入不足、焼付き、組立不能を防止しやすい |
部品の互換性を確保しやすい | 同じ公差で加工すれば交換性を持たせやすい |
■はめあい公差のデメリット・注意点
はめあい公差を厳しく指定しすぎると、加工コストが上がります。
H7穴やh6軸などは、一般寸法公差よりも高い精度が必要になるため、リ ーマ加工、研削加工、精密旋削、測定管理が必要になる場合があります。
また、はめあい公差だけを指定しても、実際の組付け状態が必ず安定するとは限りません。表面粗さ、真円度、円筒度、同軸度、面取り、温度変化、材質の硬さも影響します。
■はめあい公差の主な用途
分野 | 主な用途 |
機械部品 | シャフト、カラー、スリーブ、ピン、ブッシュ |
軸受部品 | ベアリング内輪・外輪、ハ ウジング穴、軸受座 |
治具 | ノックピン穴、位置決めピン、着脱部品 |
金型 | ガイドピン、ガイドブシュ、パンチ、ダイ部品 |
回転部品 | ギア、プーリー、ローラー、スプロケット |
板金・製缶 | 位置決め穴、圧入ナット、カラー圧入部 |
自動化設備 | リニアガイド取付部、ローラー軸、搬送治具 |
■はめあい公差と寸法公差の違い
項目 | はめあい公差 | 寸法公差 |
管理対象 | 穴と軸の組み合わせ | 単体部品の寸法 |
目的 | 組付け状態や機能を管理する | 寸法範囲を管理する |
例 | H7/g6、H7/p6 | φ10±0.02、50±0.1 |
重視点 | すきま・しまり・互換性 | サイズの許容範囲 |
使用場面 | 軸受、ピン、圧入、摺動 | 一般部品寸法 |
寸法公差は単体寸法の許容範囲を示します。はめあい公差は、組み合わさる部品同士の関係を管理するものです。
■はめあい公差と幾何公差の関係
はめあい公差は、穴径や軸径の寸法を管理します。
しかし、軸や穴の形状が悪いと、寸法が公差内でも組付け不良が発生することがあります。
例えば、穴径がH7内に入っていても、真円度が悪いとピンが入りにくくなります。軸径がh6内でも、円筒度が悪いと部分的にきつくなることがあります。
そのため、高精度なはめあいでは、寸法公差だけでなく、真円度、円筒度、同軸度、表面粗さも合わせて管理することが重要です。
■はめあい公差で発生しやすい不良
はめあい公差に関係する不良には、ガタつき、圧入不足、圧入過大、焼付き、組立不能、抜け、回転不良、異音、偏摩耗があります。
すきまが大きすぎると、ガタ、振動、位置ズレが発生します。すきまが小さすぎると、回転が重くなったり、組立時にかじりが発生したりします。
しまりばめでは、しまり代が大きすぎると部品が割れる、変形する、ベアリングが内部すきま不足になるなどの問題が起こります。しまり代が小さすぎると、使用中に部品が抜けたり、空転したりする可能性があります。
■はめあい公差の測定方法
はめあい公差の測定には、マイクロメータ、シリンダゲージ、内径測定器、ピンゲージ、限界ゲージ、三次元測定機などが使われます。
軸径はマイクロメータで測定することが多く、穴径はシリンダゲージや内径マイクロメータで測定します。量産品では、通り・止まりゲージを使って合否判定することもあります。
精密部品では、温度による寸法変化にも注意が必要です。金属は温度で膨張・収縮するため、測定環境を管理することが重要です。
■はめあい公差の注意点
はめあい公差では、用途に合った公差を選ぶことが重要です。
回転させたいのか、スライドさせたいのか、固定したいのか、位置決めしたいのかによって、選ぶはめあいは変わります。
また、材質の組み合わせ、使用温度、荷重、潤滑、表面処理、組立方法も考慮する必要があります。メッキやアルマイトを行う場合、処理後に寸法が変わるため、処理前後の寸法管理が重要です。
■図面指示で注意すべきこと
図面では、穴と軸のどちらにどの公差を指定するかを明確にします。
例えば、穴側に「φ10 H7」、軸側に「φ10 g6」と指定すると、H7/g6のはめあいになります。圧入部であれば、穴側H7、軸側p6など、用途に応じた組み合わせを検討します。
また、はめあい部には、面取り、バリ取り、表面粗さ、真円度、円筒度も合わせて指定すると、組立トラブルを防ぎやすくなります。
■まとめ
はめあい公差とは、穴と軸などの組み合わせ部品において、すきま・しまり・中間状態を管理するための公差です。軸受、ピン、ブッシュ、シャフト、ギア、治具、金型部品などで広く使われます。
すきまばめは回転・摺動・着脱に、しまりばめは圧入・固定に、中間ばめは位置決めや軽い固定に適しています。
高品質な設計では、H7/g6などの公差記号だけでなく、実際の使用条件、表面粗さ、真円度、円筒度、同軸度、組立方法まで考慮することが重要です。
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