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Elongation Value

伸び値

伸び値とは、板金を曲げたときに、曲げ部分で材料がどれだけ伸びるかを示す値です。


板金加工では、平らな板を曲げると、曲げの外側は引き伸ばされ、内側は圧縮されます。この変形によって、曲げ後の寸法と曲げ前の展開寸法には差が生じます。


この差を正しく見込むために使われるのが伸び値です。展開図を作成する際には、曲げによる伸びを考慮しないと、完成品の寸法が図面通りになりません。



■伸び値が必要な理由


※伸び値が必要な理由は、曲げ加工後の寸法を正確に仕上げるためです。


板金を曲げると、曲げ部には材料の変形が発生します。外側は伸び、内側は縮みますが、その中間にはほとんど伸び縮みしない中立軸があります。


実際の展開寸法は、この中立軸の位置を考慮して求める必要があります。


伸び値を考慮せずに展開すると、

  • 曲げ後の外寸や内寸のずれ

  • 組立時に穴位置が合わない

  • カバーが干渉する

  • ブラケット寸法が合わないなどの問題が発生します。



■伸び値と展開寸法の関係


※伸び値は、展開寸法を計算するうえで重要です。


例えば、L字曲げやコの字曲げの部品では、単純に各辺の長さを足し合わせるだけでは正しい展開寸法になりません。曲げ部分で材料が伸びるため、その分を補正する必要があります。


展開寸法を出す際には、曲げ角度、板厚、内R、材質、金型条件などをもとに伸び値を設定します。

この伸び値を反映することで、曲げ後に狙った寸法へ仕上げやすくなります。



■伸び値に影響する要素


伸び値は、さまざまな条件によって変わります。主な要素は、材質、板厚、曲げ角度、内R、ダイ幅、曲げ方法です。

材質が変わると、材料の伸びやすさやスプリングバック量が変わります。


鉄、ステンレス、アルミでは、同じ板厚・同じ角度でも伸び値が異なる場合があります。


板厚が厚くなるほど、曲げ部の変形量も大きくなります。また、内Rが大きい場合は緩やかに曲がるため、伸び方も変わります。金型のV幅や曲げ方法によっても中立軸の位置が変化し、伸び値に影響します。



■伸び値と中立軸


伸び値を理解するうえで重要なのが中立軸です。中立軸とは、曲げ加工時に伸びも縮みもしないと考えられる仮想的な位置です。


板材を曲げると、外側は引張られて伸び、内側は圧縮されて縮みます。その間に、伸び縮みがほぼゼロになる層があります。この位置が中立軸です。


中立軸は、板厚のちょうど中心にあるとは限りません。材質、板厚、曲げR、加工条件によって内側または外側へ移動します。


◆この中立軸の位置を見込むことで、正しい展開寸法を求められます。



■伸び値とKファクター


伸び値の計算では、Kファクターという考え方が使われることがあります。


Kファクターとは、板厚に対して中立軸がどの位置にあるかを示す係数です。板厚の内側から中立軸までの距離を、板厚で割った値として表されます。


Kファクターを使うことで、曲げ部の展開長さを計算できます。ただし、実際の加工では理論値だけでなく、設備、金型、材質、加工実績に基づいた補正が必要です。



■伸び値と曲げ角度


曲げ角度が変わると、伸び値も変わります。



90度曲げ     :  標準的な伸び補正が使われることが多い

鋭角曲げ 鈍角曲げ:  曲げ部の長さや変形量が変わるため、伸び値も調整する必要があります。


鋭角に曲げる場合は材料への変形が大きくなり、外側の伸びも大きくなりやすくなります。一方、大きなRで緩やかに曲げる場合は、曲げ部の円弧長を正しく見込む必要があります。



■伸び値と材質の違い


伸び値は材質によって異なります。


鉄     : 比較的安定しており、一般的な板金加工で基準値を作りやすい材料です。

ステンレス : 強度が高く、スプリングバックも大きいため、鉄とは異なる補正が必要になる場合がありま         す。

アルミ   : 軽く加工しやすい一方で、合金の種類や熱処理状態によって伸びやすさが変わります。

      : 同じアルミでも、A5052、A6061など材質が変わると曲げ挙動も変化します。


そのため、

◆伸び値は材質ごとに加工実績をもとに管理することが重要です。



■伸び値と金型条件


伸び値は、使用する金型条件によっても変わります。


プレスブレーキで曲げる場合、Vダイの幅、パンチ先端R、曲げ方法によって曲げ部の内Rや中立軸位置が変化します。結果として、同じ図面寸法でも展開寸法が変わることがあります。


自由曲げ、底突き曲げ、コイニングでも伸び値は異なります。自由曲げでは金型条件や押し込み量の影響を受けやすく、底突き曲げやコイニングでは金型形状に近い寸法になりやすい傾向があります。



■伸び値の注意点


伸び値は、理論計算だけで完全に決まるものではありません。

実際の加工では、材料ロット差、板厚公差、金型摩耗、曲げ順序、スプリングバックなどによって仕上がり寸法が変わります。そのため、重要寸法がある部品では、試し曲げや初品確認を行い、実測値をもとに補正することが大切です。


また、複数曲げがある部品では、1か所ごとの伸び値の誤差が積み重なり、全体寸法に影響します。高精度部品では、どの寸法を基準に展開するかを明確にする必要があります。



■図面指示で注意すべきこと


図面では、曲げ後に重要となる寸法、基準面、内R、曲げ角度、寸法公差を明確に指定することが重要です。


伸び値そのものを図面に書くことは多くありませんが、加工業者が正しく展開できるように、完成形状と重要管理寸法を明確にする必要があります。


特に、穴位置、取付面、相手部品と接触する面などは、どこを基準に寸法管理するかを明記すると、加工後のズレを防ぎやすくなります。



■依頼時に確認すべきこと


伸び値が重要になる板金部品を依頼する際は、材質、板厚、曲げ角度、内R、数量、寸法公差、後工程の有無を確認します。

特に、複数曲げ部品、箱曲げ部品、組立精度が必要なブラケットやカバーでは、展開寸法の補正が品質を左右します。

曲げ後に溶接、塗装、メッキ、組立がある場合は、曲げ寸法のズレが後工程に影響しないか確認しておくことが重要です。



■まとめ


伸び値とは、板金を曲げたときに曲げ部で発生する材料の伸びを考慮するための値です。展開寸法を正しく計算し、曲げ後の製品寸法を図面通りに仕上げるために重要です。


伸び値は、材質、板厚、曲げ角度、内R、金型条件、曲げ方法によって変わります。理論計算だけでなく、実際の加工実績や初品確認による補正が必要です。


板金加工で寸法精度を安定させるには、伸び値を正しく理解し、展開図、曲げ条件、基準寸法を適切に管理することが大切です。

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