Deep Drawing
深絞り
深絞りとは、金属板をパンチとダイで押し込み、板材を破断させずに引き伸ばしながら、円筒形・角筒形・カップ形状などの深い立体形状を作るプレス加工です。
一般的な曲げ加工が板材の一部を折り曲げる加工であるのに対し、深絞りは板全体を立体的に変形させる点が特徴です。
自動車部品、家電部品、容器、ケース、カバー、モーターケース、電池ケース、医療機器部品、厨房機器部品など、継ぎ目の少ない立体部品を作る際に使われます。
■深絞りの仕組み
深絞り加工では、まず平らな板材をダイの上に置き、パンチで材料を押し込みます。このとき、材料はダイの穴へ引き込まれながら、カップ状や容器状に成形されます。
加工中には、材料がしわにならないように「しわ押さえ」で板材を適切に押さえます。押さえ力が弱すぎるとしわが発生し、強すぎると材料が流れにくくなって割れやすくなります。
深絞りでは、パンチ、ダイ、しわ押さえ、潤滑、材料特性のバランスが非常に重要です。
■深絞りの目的
深絞りの目的は、板材から継ぎ目の少ない深い立体形状を作ることです。
溶接や組立で箱形状を作る場合、複数部品を接合する必要があります。一方、深絞りでは1枚の板材から一体形状を作れるため、部品点数を減らし、軽量化や強度向上につなげることができます。
また、溶接部がないため、気密性・水密性・外観性を高めやすい点も大きなメリットです。
■深絞りの主な用途
深絞りは、カップ、缶、ケース、カバー、容器、トレイ、モーターケース、センサーケース、電池ケース、フィルターケースなどに使われます。
自動車分野 : 燃料系部品、オイルパン、カバー部品、補強部品などに活用されます。
家電分野 : 洗濯機、冷蔵庫、調理機器、電池関連部品などに使われます。
ステンレス : 厨房機器、医療機器、食品機械など、耐食性や清潔性が求められる分野でも使用されます。
■深絞りのメリット
深絞りのメリットは、1枚の板材から立体形状を一体成形できることです。
溶接や組立を減らせる → 部品点数削減、軽量化、コスト削減につな がる場合があります。
継ぎ目が少ない → 漏れにくく、強度や外観品質も安定しやすくなります。
大量生産 → 金型を用意すれば、同じ形状を高速かつ安定して加工できる。
■深絞りのデメリット
深絞りのデメリットは、金型費用がかかることです。
専用金型を使用 → 少量生産や試作品では初期費用が高くなる場合があります。
形状変更が発生 → 金型修正や新規製作が必要になることがあります。
さらに、
材料の割れ、しわ、板厚減少、寸法ばらつきなどが発生しやすく、加工条件の設定が難しい加工でもあります。
特に深さが深い形状や角部が小さい形状では、難易度が高くなります。
■深絞りに適した材料
深絞りには、伸びがよく、塑性変形しやすい材料が適しています。
代表的な材料には、軟鋼板、ステンレス、アルミ、銅、真鍮などがあります。
軟鋼板 : 比較的成形しやすく、一般的な深絞り加工でよく使用されます。
ステンレス : 耐食性に優れていますが、加工硬化しやすく、割れやすい場合があります。
アルミ : 軽量で成形しやすい一方、材質によっては割れやしわに注意が必要です。
◆材料選定では、伸び、強度、板厚、表面品質、後工程を考慮することが重要です。
■深絞りと板厚の関係
深絞りでは、板厚が加工性に大きく影響します。
板厚が薄すぎる → 成形中に破 れや板厚減少が発生しやすくなります。
板厚が厚い → 成形荷重が大きくなり、金型や設備への負荷が増えます。
また、深絞りでは成形後に板厚が均一にならない場合があります。特に角部や側壁部では、材料が引き伸ばされて薄くなることがあります。
そのため、
◆設計時には、必要強度と成形性のバランスを考えて板厚を決めることが重要です。
■深絞りで発生しやすい不良
深絞りで発生しやすい不良には、割れ、しわ、板厚減少、耳、かじり、傷、寸法ばらつき があります。
割れ → 材料が過度に引き伸ばされたときに発生します。
しわ → 材料が余って圧縮される部分で発生しやすく、
しわ押さえ力の不足が原因になることがあります。
かじり・傷 → 材料と金型の摩擦によって発生します。※適切な潤滑や金型表面の管理が重要です。
寸法ばらつき → 材料特性、金型精度、プレス条件、スプリングバックなどによって発生します。
■深絞りとしわ押さえ
深絞りでは、しわ押さえが非常に重要です。
しわ押さえとは、材料の外周部を押さえながら、必要な量だけ材料をダイ内へ流れ込ませるための機構です。
押さえ力が弱いと、材料が余ってしわが発生します。反対に押さえ力が強すぎると、材料が流れにくくなり、割れが発生しやすくなります。
◆深絞りの品質を安定させるには、材料の流れを適切に制御することが重要です。
■深絞りと潤滑
深絞り加工では、潤滑も重要な条件です。
材料と金型の間には大きな摩擦が発生します。摩擦が大きいと、材料がスムーズに流れず、割れ、かじり、傷が発生しやすくなります。
潤滑油や成形油を適切に使用することで、材料の流れを改善し、金型への負担を減らせます。ただし、後工程で溶接、塗装、洗浄がある場合は、潤滑剤の残留にも注意が必要です。
■深絞りの注意点
深絞りでは、形状の深さ、角R、絞り比、板厚、材質を考慮する必要があります。
角Rが小さすぎると、材料が急激に引き伸ばされ、割れが発生しやすくなります。深さが深い形状では、1回の加工で成形できない場合があり、複数回に分けて絞る「再絞り」が必要になることもあります。
また、材料の圧延方向によって成形性が変わる場合があり、耳と呼ばれる高さばらつきが発生することもあります。
■図面指示で注意すべきこと
図面では、外形寸法、深さ、角R、板厚、材質、表面品質、公差を明確に指定することが重要です。
深絞りでは、角部や底部のRが加工性を大きく左右します。無理に小さいRを指定すると、割れや板厚減少の原因になります。
また、外観部品では、傷、しわ、押し跡の許容範囲も明確にしておく必要があります。
◆必要に応じて、重要管理寸法や測定基準を指定すると、品質の認識違いを防ぎやすくなります。
■まとめ
深絞りとは、平らな板材をパンチとダイで押し込み、カップ状・容器状・ケース状などの深い立体形状を作るプレス加工です。
1枚の板材から継ぎ目の少ない部品を作れるため、部品点数削減、軽量化、気密性向上、外観品質向上に有効です。
一方で、割れ、しわ、板厚減少、寸法ばらつきが発生しやすく、材料選定、金型設計、しわ押さえ、潤滑、角R設定が重要になります。
深絞りは、量産性と一体成形性に優れた加工方法です。設計段階から成形性を考慮することで、高品質で安定したプレス部品を製作しやすくなります。
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