樹脂
熱溶解積層(FDM)方式は、これまで樹脂3Dプリンターに採用されてきた造形方法です。金属3Dプリンターにおける熱溶解積層(FDM)方式では、熱を加えると軟化する熱可塑性樹脂と金属粉末を溶かして押し出し、一層ずつ固めます。

熱溶解積層方式による3Dプリントとは
熱溶解積層(FDM: Fused Deposition Modeling)方式は、3Dプリント技術の一つで、樹脂3Dプリンターで広く採用されている造形方法です。
金属3DプリンターにおけるFDM方式では、熱可塑性樹脂と金属粉末を混合したフィラメントを使用し、熱で軟化させて押し出し、一層ずつ積み上げることで製品を造形します。この技術は、プロトタイプの製作や小規模生産に適しており、複雑な形状の部品を効率的に製造できます。
ここでは、熱溶解積層方式による3Dプリントの仕組みや種類、適用金属、注意点などについて詳しく解説します。
熱溶解積層方式の基本的な仕組み
FDM方式は、加熱されたノズルからフィラメントを押し出し、造形物を一層ずつ構築していく技術です。フィラメントには、熱可塑性樹脂と金属粉末が混合された材料が使用されます。
加工の流れ
フィラメント供給: スプールに巻かれたフィラメントを3Dプリンターに供給。
加熱と押し出し: ノズル内でフィラメントを加熱し、溶融状態にします。
積層造形: 溶融した材料をノズルから押し出し、造形物の形状に従って積み上げます。
冷却と硬化: 押し出された材料は冷却され、層ごとに固まります。
この工程を繰り返すことで、設計データに基づいた立体物が完成します。
主な加工内容
試作品の製作: 製品デザインの確認や改良に役立つプロトタイプの製造。
小規模生産: 少量の部品やカスタム部品の製作。
複雑形状の造形: 従来の加工方法では製造が難しい形状の製作。
熱溶解積層方式の種類
FDM方式は、使用するフィラメントや目的に応じていくつかのバリエーションがあります。
1. 樹脂フィラメントFDM
熱可塑性樹脂(PLA、ABS、PETGなど)を使用した一般的なFDM方式。軽量で加工しやすい。
2. 金属フィラメントFDM
熱可塑性樹脂に金属粉末を混合したフィラメントを使用。造形後に焼結処理を行うことで、金属部品を製造。
3. 複合材料フィラメントFDM
ガラス繊維や炭素繊維を含むフィラメントを使用。強度や剛性が向上するため、耐久性の高い部品を製作可能。
熱溶解積層方式に適した金属
FDM方式で使用される金属フィラメントは、以下の金属が主に適用されます。
ステンレス鋼: 耐食性と強度が求められる部品に適用。
チタン: 軽量かつ強度が高い部品の製造。
アルミニウム: 軽量で加工性が良く、航空宇宙や自動車部品に使用。
銅: 優れた導電性が必要な用途に適しています。
熱溶解積層方式で対応が難しい金属
以下の金属は、熱溶解積層方式による加工が難しい場合があります。
高融点金属(例: タングステン、モリブデン): 加熱温度が高すぎて一般的なプリンターでは対応できません。
非常に硬い金属(例: 超硬合金): フィラメント化が難しく、積層造形に適さない。
磁性金属(例: 鉄、ニッケル): 材料特性が積層プロセスに影響を与える可能性。
熱溶解積層方式の活用例
FDM方式は、以下の分野で活用されています。
製造業: プロトタイプの製作や部品製造。
航空宇宙産業: 軽量で複雑な形状の部品製作。
医療分野: 義肢やカスタムインプラントの製作。
教育および研究: モデルや試作品の作成。
熱溶解積層方式のメリット
低コスト: 他の3Dプリント技術と比較して初期投資が少ない。
多用途性: 樹脂から金属まで、多様なフィラメントを使用可能。
複雑形状の製作: 設計データに基づいて、複雑な形状を簡単に造形。
プロセスの簡便性: 操作が比較的容易で、少量生産に最適。
軽量化: 中空構造など、軽量設計が容易。
熱溶解積層方式の注意点
焼結処理の必要性: 金属フィラメントの場合、造形後に焼結が必要。
表面仕上げ: 層状構造が残るため、仕上げ加工が必要な場合がある。
寸法精度: 他の3Dプリント技術と比較して精度が劣る場合がある。
材料制限: フィラメントに適した金属や樹脂が限られる。
造形速度: 一層ずつ積み上げるため、大型部品の製作には時間がかかる。
まとめ
熱溶解積層方式(FDM)は、低コストかつ多用途な3Dプリント技術として、プロトタイプ製作や小規模生産に適しています。
金属フィラメントを用いたFDM方式では、焼結処理によって金属部品の製造が可能となり、製造業から医療分野まで幅広い応用が期待されています。
この技術を正しく活用することで、製造プロセスの効率化と革新を推進することができます。