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Stress Corrosion Cracking

応力腐食割れ

応力腐食割れとは、金属材料に「引張応力」と「腐食環境」が同時に作用することで、材料表面や内部に割れが発生し、進展していく現象です。


通常、金属は腐食環境に置かれると表面から徐々に腐食します。しかし応力腐食割れでは、見た目には大きな腐食がない場合でも、材料内部に細いクラックが進行し、突然破断に至ることがあります。そのため、配管、タンク、圧力容器、ボルト、ばね、溶接構造物、化学装置、海水環境部品などでは特に注意が必要です。


応力腐食割れは、材料・応力・環境の3条件が重なったときに発生します。どれか一つを低減できればリスクを下げられるため、材質選定、応力除去、表面処理、環境管理が重要になります。



■応力腐食割れの発生条件

条件

内容

材料要因

SCCを起こしやすい材料が使われている

ステンレス、黄銅、アルミ合金、高強度鋼

応力要因

引張応力や残留応力が存在する

溶接応力、曲げ応力、締付応力

環境要因

腐食を促進する成分が存在する

塩化物、アンモニア、苛性ソーダ、湿気

温度要因

高温環境で腐食反応が進む

熱交換器、配管、化学装置

時間要因

長期間使用中に割れが進展する

屋外設備、薬液設備、圧力容器

応力腐食割れは、単なる材料不良ではなく、使用環境と応力状態が関係する複合的な損傷です。



■応力腐食割れが発生しやすい材料

材料

発生しやすい環境

注意点

オーステナイト系ステンレス

塩化物環境、高温水、海水

SUS304、SUS316でも条件次第で発生

黄銅

アンモニア環境

脱亜鉛腐食や割れに注意

アルミ合金

塩分環境、特定薬品環境

高強度アルミで注意

高強度鋼

水素環境、腐食環境

水素脆化との複合に注意

チタン合金

特定の高温塩化物環境

条件限定で発生する場合あり

ニッケル合金

苛酷な薬液環境

材料グレード選定が重要

ステンレスは「錆びにくい材料」として使われますが、塩化物環境では応力腐食割れを起こすことがあります。特にSUS304は、塩分・高温・引張応力が重なる環境で注意が必要です。



■応力腐食割れの主な原因

原因

内容

発生例

溶接残留応力

溶接時の加熱・冷却で応力が残る

配管、タンク、フレーム

曲げ加工応力

曲げやプレス加工で応力が残る

板金部品、カバー、ブラケット

締付応力

ボルト締結や圧入で引張応力がかかる

ボルト、フランジ、嵌合部

塩化物付着

塩分が表面に残る

海沿い、洗浄水、汗、薬液

高温環境

腐食反応と割れ進展が速くなる

熱交換器、温水配管

表面傷

傷やピットが割れの起点になる

加工傷、研磨傷、打痕

材料選定不良

環境に対して材料が不適切

SUS304を塩害環境で使用

応力腐食割れは、表面の小さな傷や腐食ピットを起点に発生することがあります。見た目に軽微な腐食でも、内部ではクラックが深く進んでいる場合があります。



■応力腐食割れによる主な不具合

不具合

内容

影響

クラック発生

表面や内部に細い割れが発生する

強度低下

漏れ

配管やタンクに割れが貫通する

液漏れ、ガス漏れ

突然破断

大きな変形なく破断する

事故・設備停止

耐圧低下

圧力容器や配管の安全性が低下

破裂リスク

腐食進行

割れ内部で腐食が進む

補修困難

品質クレーム

使用後に破損や漏れが発生

信頼性低下

応力腐食割れは、外観だけでは判断しにくく、急に漏れや破断として現れることがあります。そのため、安全部品や圧力部品では特に重要な管理項目です。



■応力腐食割れの検査方法

検査方法

特徴

向いている対象

目視検査

表面の割れや錆を確認する

初期確認、外観検査

浸透探傷検査

表面に開口したクラックを検出する

ステンレス、アルミ、非磁性材料

磁粉探傷検査

表面・表層の割れを検出する

鉄鋼材料

超音波探傷検査

内部割れや厚物部品の欠陥を検出する

配管、厚板、溶接部

X線検査

内部欠陥や割れを確認する

溶接部、鋳物、重要部品

断面観察

割れ進展状態を詳しく確認する

原因解析、破損調査

応力腐食割れは細く進展するため、初期段階では検出が難しい場合があります。重要部品では、使用環境やリスクに応じて非破壊検査を組み合わせることが有効です。



■応力腐食割れを防ぐ対策

対策

内容

効果

材料選定を見直す

環境に合った耐食材料を選ぶ

SCC感受性を下げる

残留応力を除去する

応力除去焼きなましを行う

割れの駆動力を低減

溶接条件を管理する

入熱、溶接順序、後処理を最適化する

溶接部の割れリスクを低減

表面仕上げを改善する

傷、ピット、打痕を減らす

割れ起点を減らす

塩分を除去する

洗浄・乾燥・防塩対策を行う

腐食環境を弱める

表面処理を行う

パシベート、塗装、ライニングなど

腐食因子との接触を防ぐ

設計応力を下げる

肉厚、R形状、締付条件を見直す

応力集中を抑える

定期点検を行う

腐食・割れ・漏れを早期発見する

重大破損を防ぐ

応力腐食割れ対策では、材料だけでなく、応力を減らす設計と腐食環境を作らない管理が重要です。



■応力腐食割れと水素脆化の違い

項目

応力腐食割れ

水素脆化

主な原因

腐食環境と引張応力の組み合わせ

金属内部への水素侵入

発生環境

塩化物、薬液、高温水など

酸洗い、電気メッキ、腐食環境

対象材料

ステンレス、黄銅、アルミ合金など

高強度鋼、ばね鋼、メッキ品

代表不具合

配管・タンクの割れ、漏れ

高強度ボルトの遅れ破壊

対策

材料選定、応力除去、環境管理

ベーキング、水素侵入防止、強度見直し

どちらも「応力」と関係する割れですが、応力腐食割れは腐食環境が主因であり、水素脆化は水素の侵入が主因です。ただし、実際の現場では腐食によって水素が発生し、両者が複合的に関係する場合もあります。



■応力腐食割れが発生しやすい部位

部位

発生しやすい理由

溶接部周辺

残留応力と組織変化がある

曲げ部

引張応力や加工硬化が残る

ねじ部

ねじ谷に応力が集中する

圧入部

常に引張応力がかかる

穴周辺

応力集中と腐食液の滞留が起きやすい

タンク底部

液溜まりや沈殿物で腐食環境になりやすい

配管接続部

応力、振動、薬液が重なりやすい

特に溶接部や曲げ部は、残留応力が残りやすく、応力腐食割れの起点になりやすい部位です。



■製造現場での活用例

分野

管理ポイント

化学装置

薬液に合った材料選定、応力除去

食品機械

洗浄液・塩分・温水環境でのSUS材管理

半導体装置

薬液配管、洗浄装置部品の耐食性管理

配管設備

溶接部、フランジ部、応力集中部の点検

タンク製作

溶接残留応力、液溜まり、腐食環境の管理

海沿い設備

塩分付着、結露、ステンレス材のSCC対策

ボルト締結部

締付応力、腐食環境、材質選定の確認

応力腐食割れは、製造直後ではなく、使用開始後に時間をかけて進行することが多い不具合です。環境条件を想定した設計と定期点検が重要です。



■応力腐食割れ指定時・対策時のポイント

確認項目

内容

使用環境

塩分、薬品、温度、湿度、結露の有無

材質

SCCに強い材料か確認する

応力状態

溶接、曲げ、締付、圧入による応力がないか

表面状態

傷、ピット、打痕、腐食起点がないか

熱処理

応力除去焼きなましの必要性

表面処理

パシベート、塗装、ライニングの有無

検査方法

浸透探傷、超音波、定期点検の実施

「ステンレスだから大丈夫」と考えるのではなく、使用環境に応じて材料グレードや表面処理を選定することが重要です。



■SEO向けまとめ


応力腐食割れとは、金属材料に引張応力と腐食環境が同時に作用することで発生する割れのことです。


ステンレス、黄銅、アルミ合金、高強度鋼などで発生することがあり、特に塩化物環境、高温水、薬液環境、溶接部、曲げ部、締結部では注意が必要です。


応力腐食割れが進行すると、クラック、漏れ、耐圧低下、突然破断、設備停止につながります。対策としては、適切な材料選定、応力除去焼きなまし、溶接条件管理、表面傷の低減、塩分除去、パシベートや塗装などの表面処理が有効です。


高信頼性部品では、使用環境と応力状態を考慮した設計・検査が重要です。

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