Degreasing Treatment
脱脂
脱脂とは、金属や樹脂などの表面に付着した油分、加工油、防錆油、切削油、グリス、手脂、汚れなどを除去する洗浄工程です。金属加工、板金加工、溶接、塗装、メッキ、接着、熱処理、組立、検査など、さまざまな製造工程の前処理として行われます。
加工品の表面には、切削油、防錆油、プレス油、研磨剤、粉じん、手の油分などが付着していることがあります。これらが残ったまま次工程へ進むと、塗装のはじき、メッキの密着不良、溶接不良、接着不良、熱処理ムラ、錆の発生などにつながります。そのため、脱脂は製品品質を安定させるための基本工程です。
脱脂は、単に「表面をきれいにする作業」ではなく、後 工程の品質を左右する重要な前処理です。特に表面処理や塗装では、脱脂の良し悪しが仕上がりに大きく影響します。
■脱脂の主な目的
目的 | 内容 | 主な効果 |
油分除去 | 切削油、防錆油、グリスを取り除く | 後工程の密着性向上 |
汚れ除去 | 粉じん、切粉、手脂を除去する | 外観不良・異物混入を防止 |
表面処理前処理 | メッキ・塗装前の表面を整える | 剥がれ・ムラ・はじきを防ぐ |
溶接品質向上 | 油分や水分を除去する | ブローホールや溶接欠陥を抑える |
接着性向上 | 接着面を清浄化する | 接着不良を防ぐ |
防錆品質安定 | 処理前の汚れを除去する | 防錆皮膜の密着性向上 |
脱脂が不十分だと、見た目にはきれいでも表面に油膜が残り、後工程で不具合が発生することがあります。特にメッキ、塗装、接着では、脱脂不良が直接的な品質不良につながります。
■脱脂の主な方法
方法 | 特徴 | 主な用途 |
アルカリ脱脂 | アルカリ洗浄液で油分を分解・除去する | 金属部品、メッキ・塗装前処理 |
溶剤脱脂 | 有機溶剤で油分を溶解除去する | 精密部品、短時間洗浄 |
超音波脱脂 | 超音波振動で細部の汚れを除去する | 小物 精密部品、穴・溝の洗浄 |
電解脱脂 | 電気分解を利用して強力に洗浄する | メッキ前処理、精密表面洗浄 |
蒸気脱脂 | 溶剤蒸気で油分を除去する | 精密部品、複雑形状部品 |
手拭き脱脂 | ウエスと洗浄剤で拭き取る | 大型部品、部分洗浄、現場作業 |
脱脂方法は、材質、汚れの種類、部品形状、後工程、必要清浄度によって選定します。量産部品ではアルカリ脱脂や超音波脱脂、精密部品では溶剤脱脂や電解脱脂が使われることがあります。
■脱脂が必要な工程
工程 | 脱脂が必要な理由 | 不十分な場合の不具合 |
メッキ | 皮膜を密着させるため | メッキ剥がれ、ムラ、ピンホール |
塗装 | 塗膜の密着性を高めるため | はじき、剥がれ、膨れ |
溶接 | 油分や水分を除去するため | ブローホール、割れ、スパッタ増加 |
接着 | 接着面を清浄化するため | 接着強度不足、剥離 |
熱処理 | 油分の焼付きやムラを防ぐため | 変色、スケール、処理ムラ |
組立 | 異物や油分を管理するため | 動作不良、汚染、品質低下 |
脱脂は、多くの工程で「前処理」として行われます。前処理が不十分だと、後工程でいくら条件を整えても不良を防ぎにくくなります。
■脱脂不良による主なトラブル
トラブル | 内容 | 影響 |
塗装はじき | 油分が残り塗料が弾かれる | 外観不良、再塗装 |
メッキ剥がれ | 皮膜が下地に密着しない | 防錆性・外観性低下 |
ピンホール | 油分やガスが抜けて小穴ができる | 気密不良、腐食 |
溶接欠陥 | 油分や水分がガス化する | ブローホール、強度低下 |
接着不良 | 接着剤が母材に密着しない | 剥離、強度不足 |
錆発生 | 汚れや水分が残る | 腐食、外観不良 |
脱脂不良は、後工程で初めて発覚することが多く、手直しや再処理の原因になります。品質を安定させるには、脱脂工程そのものを管理することが重要です。
■脱脂と洗浄の違い
項目 | 脱脂 | 洗浄 |
主な目的 | 油分・グリス・防錆油の除去 | 汚れ、粉じん、薬液、異物の除去 |
対象汚れ | 油性汚れが中心 | 油分、水溶性汚れ、粉じんなど広い |
使用薬剤 | アルカリ洗浄剤、溶剤、脱脂剤 | 水、洗剤、酸、アルカリ、純水など |
